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トランプ・安倍両氏の関係は実に「バットマンとロビン」的である

英語では「サイドキック」と呼ばれます
海野 素央 プロフィール

実に「ビジネスライク」

今回のアジア歴訪で、安倍晋三首相とトランプ大統領の個人的な人間関係にひそむ「落とし穴」も見えてきました。

日本国内には、安倍・トランプ両首脳の関係は蜜月で、今回も親密さを内外に発信できた、と高く評価する声があります。

ところが、日本と海外の受け止め方にはズレがあります。

米ワシントン・ポスト紙は、「安倍首相はトランプ氏の忠実なサイドキックを演じた」と報じています。サイドキックは、日本語に直訳すると「相棒」という意味ですが、これに近い英単語は「アシスタント」で、「権限をさほど持たない人物」という意味が含まれています。

安倍首相は、トランプ大統領の忠実なアシスタントであり、大統領よりも権限がない人物と見られているのです。

また、筆者の大学でのゼミに参加しているカナダ人留学生は、トランプ大統領と安倍首相の関係を「バットマンとロビン」のそれに喩え、「安倍首相は『脇役』に見える」と話していました。いずれにせよ、両首脳の関係は、国際社会では「対等」とはあまり見られていないようです。

 

今回のトランプ大統領のアジア歴訪では、安倍首相がトランプ大統領との親密さを前面に出していたのに対して、中国の習近平国家主席は大国同士の「対等」な関係を演出していました。

特に、北京の人民大会堂で開催された盛大な歓迎式典における習主席の行動は、注目に値します。音楽隊による米国と中国の国歌が演奏され、礼砲が鳴り響く中で、「対等」な経済大国のリーダーとして、習主席は堂々たる態度でトランプ大統領を歓迎しました。

Photo by gettyimages

ただし、日米首脳の立場が対等でないからといって、必ずしも両者の関係が悪いというわけではありません。ホワイトハウスでの総括からは、トランプ大統領が通商政策と安倍首相との個人的な人間関係を明確に区別しているということが、はっきり読み取れます。

トランプ大統領は「支持基盤第一主義」であるからこそ、安倍首相との関係を単なる「仲良し」や「友人」に留まらない、「成果に基づく関係」であると考えています。過去の日米首脳のような「信頼志向」の関係を「成果志向」に一段引き上げた、とも言えるでしょう。この点は看過できません。

従って、日本政府がこれまでのように日本的な人間関係のパラダイムでトランプ大統領に接すると、困惑する場面が今後出てくるかもしれません。

例えば日本国内では、一部に安倍首相とゴルフを共にしなかったバラク・オバマ前大統領を「ビジネスライク」「冷たい」と評する声があります。

それに対してトランプ大統領は、外部からは一見温かい関係を構築しているように見えるのですが、その実、遠慮なく、躊躇せず、実利を勝ち取っていくタイプです。この態度はオバマ前大統領とは異なる「ビジネスライク」であると言えます。日本側は、この点を早急に理解する必要があるでしょう。

アジア歴訪の総括の中で、トランプ大統領が語らなかったことがあります。それは北朝鮮による日本人拉致問題です。

訪日の際、周知のようにトランプ大統領は拉致被害者の家族と面会までしましたが、総括での日本への言及は、ビジネス取引の成果をリストアップするのみでした。

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