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トランプ・安倍両氏の関係は実に「バットマンとロビン」的である

英語では「サイドキック」と呼ばれます

12日間のアジア歴訪を終えて帰国したドナルド・トランプ米大統領は、11月15日、ホワイトハウスで総括を行いました。約24分の演説中、2回もペットボトルを取り出して、ふたを開けて水を飲む場面がありました。

筆者の知る限り、選挙期間中でさえ、トランプ大統領がそのような行動をとったのを見たことがありません。それほど、同大統領は今回のアジア歴訪の成果を力説したのです。本稿では、このトランプ大統領の総括の演説から、何を読み取ることができるのかを解説します。

「こんなに売ってきたぞ!」ばっかり

まずトランプ大統領は、今回のアジア歴訪で「3つの核となる目標を達成できた」と強調しました。第1は、北朝鮮に対して世界を結束させること、第2は、自由で開かれたインド太平洋地域を促進すること、第3は、インド太平洋地域において貿易パートナー及び同盟国と、公平で互恵的な経済関係を進めることです。

確かにトランプ大統領は、金正恩体制で核・ミサイルの脅威が確実に増した北朝鮮問題については、各国に結束を求めて一定の効果を上げたかもしれません。

ただ、貿易に関して言えば、トランプ大統領が「公平と互恵に基づいた2国間協定」を前面に出してトップセールスを行ったことが威圧感を与え、米国に対する小国の警戒心をかえって強めてしまったと言えるでしょう。

大統領が繰り返し述べる「貿易における公平で互恵的な関係」とは、実は自国のみの利益を追求して、他国とは利益を分かち合わない、自文化中心主義的な「米国第一主義」を実現するための単なる口実に過ぎません。

実際、米公共ラジオ(NPR)のホワイトハウス担当記者マーラ・ライアソン氏が指摘している通り、今回のアジア歴訪では、どのアジア諸国も2国間の貿易協定に名乗りを上げませんでした。ライアソン氏は「トランプ大統領のセールスは、成果が得られなかった」と、結論づけています。 

 

2国間の貿易協定を含めた米国第一主義は、アジア太平洋地域における米国からの小国離れを起こし、その結果、中国の影響力を増加させ、中国を利する方向へ事態を押し進めています。つまり、大統領の2国間の貿易協定の提案は、逆効果になったということです。

トランプ大統領は、総括の中で、日本が北朝鮮に対して独自制裁に踏み切ったことを評価しました。さらに、日本に米国製の戦闘機及び迎撃システムを購入させた理由を、「米国人労働者の雇用を創出するため」としました。北朝鮮問題を貿易不均衡是正及び米国内の雇用創出に結びつけて、ビジネス取引を行ったわけです。

続けて、トランプ大統領は「安倍首相と公平さと互恵の原則に基づいた貿易関係を深めて行くやり方について議論した」と述べました。また、「今年1月から日本企業が米国に対して80億ドル(約8970億円)を超える投資計画を発表した。これは1万7000人の雇用を生む」と強調し、日本に感謝の意を示しました。

雇用創出に関する成果のアピールはまだ終わりません。トヨタ自動車とマツダの名前を挙げて、「日本の製造業が米国に新たな工場を建設することで、4000人の雇用を増やす」とも語りました。

つまるところ、トランプ大統領による「総括」の演説は、日本との間でまとめた商談の額と、それで増やせる雇用者の数を具体的に挙げるという、「ビジネス交渉の成果をアピールする場」に過ぎなかったと言えるでしょう。そうしてトランプ大統領は、白人労働者、退役軍人及び軍需産業を含めた自身の支持基盤に強く訴えたのです。

そして結局、日本もトランプ大統領の「米国第一主義」に組み込まれたことが、今回の訪日で明らかになりました。

今後北朝鮮情勢が悪化すれば、支持率で低空飛行を続けるトランプ大統領は、北朝鮮問題を貿易不均衡是正や雇用創出と結びつけて、日本のさらなる米国製の武器購入のために、日本政府に最大限の圧力をかけてくる可能性が高いでしょう。これもまた、支持基盤をつなぎ止めるためです。