Photo by iStock
企業・経営

実は潰れる寸前だった龍角散を救った「音楽式経営」

社長が明かす秘話

「ゴホン! といえば龍角散」のCMで知られる同社の藤井隆太社長(58歳)に話を聞いた。社会保障審議会医療保険部会委員を務め、フルート奏者としても著名な同氏だが、その経歴は波瀾万丈だ。

'94年にオーナー一族として龍角散に入社するも、財務状況は火の車。しかも社内には強力な抵抗勢力が―。藤井氏はいかに社を再建したのか。

龍拡散の藤井隆太社長

経営は音楽に似ている

【国難】

最初に厚労省の医療保険部会委員として提言をさせてください。

いま、保険医療の制度は壊れつつあり、私は「国難」の訪れだと感じています。我が国の平均寿命は年々延びていますが、ここ10年「健康寿命」は延びが小さい。病気の時間が長くなっているだけなのです。

これでは医療費が嵩むのは当然。今や病気にならない強い体を作ることが、自分のため、そして国のためなのです。

そんな中、興味深い意見を聞きました。「日本は医療費の自己負担額が安いため、我々はいつしか健康を守る努力を怠るようになった」というのです。

たしかに昔は「普段から家庭薬で体の調子を整えておき、ちょっと普段と違うな、という時だけお医者様に掛かるというのが生活の知恵でした。

 

【指揮者】

私が当社へ入社したとき、社員は約100人で年商は約40億円でした。「まず現場を見て回りたい」と言ったら番頭格に反対されました。

今思えば、真実を知られるのが嫌だったのでしょう。これを押して現場を見に行くと、工場は一切、効率化していない、営業は問屋さんに「お願いします」と言うだけ。

しかも社員に倒産寸前だと伝えると「言われたことはやっています。オーナーの責任でしょう」「オーナー家にはまだお金があるんですよね?」という返事が返ってきたのです。

音楽の経験から、勘所はわかりました。新米の指揮者は「皆さんどうしましょう」と御用聞きになりがちですが、ベテランは、皆が納得するビジョンを提示し、メンバーにやってもらいます。私は後者を選びました。

【啖呵】

私のビジョンは「長所を極大化」でした。当社を「のどの問題を解決する企業」と位置づけ、最初に薬を包んで飲み込むゼリーを開発しました。

固形物である薬と、液体である水を一緒に飲み込むと喉の感覚は混乱します。だから子どもやお年寄りは錠剤が飲み込みにくく、とくに介護現場の方は苦労されていたのです。

開発時、多くの社員に「売れない」「事故が起きたらどうする」と反対されましたが「売れなければ自分が買い取る」と啖呵を切って発売し、商品は大ヒットしました。

次は「龍角散ののどすっきり飴」。固い飴に龍角散パウダーを均等に練りこむのは至難の業で、これも最初は「できない」と言われました。しかし、一部社員の努力もあって開発に成功、いまやシェアNo.1です。

経営は音楽に似ています。「これが私の音楽だ」と長所を極大化することで魅力が出てきます。逆に「器用にいろんなタイプの音楽が弾けます」ではつまらない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら
新メディア「現代新書」OPEN!