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アメリカのパリ協定離脱で資金難も…日本が「肩代わり」の有効性

投資はきっと回収できる

ドイツのボンで開かれていた「第23回・国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)」が日程を半日あまり延長、11月18日(日本時間)に閉幕した。

今回のポイントは、世界第2位の温室効果ガス排出国アメリカの離脱表明後も、残された国々がなんとか結束を維持できたことだ。締約国は、来年12月にポーランドで開かれるCOP24に向け、2020年以降の温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の実施ルールを確立するため、交渉を加速するとの宣言を採択した。

 

実施ルール作りで焦点になるのは、各国の温室効果ガスの削減目標の妥当性をどう検証するかと、先進国から発展途上国への資金支援のルールや拠出額の国別割り当てをどうするか、の2点だ。

なぜパリ協定が重要とされるのか、そもそも論を整理したうえで、日本が交渉にあたって念頭に置くべき哲学を考えてみたい。

COP23参加各国の首相・閣僚COP23参加各国の首相・閣僚の面々 photo by gettyimages

京都議定書が日本に残した「被害者意識」

パリ協定は、2015年12月に開かれたCOP21で採択された、地球温暖化防止のための多国間合意だ。世界の気温上昇を産業革命前と比べて2度未満(努力目標は1.5度未満)に食い止めることが目標である。

こうした枠組みができたのは、1997年12月に採択された「京都議定書」以来18年ぶりだった。枠組み作りが曲がりなりにも前進してきたのは、すべての加盟国が排出量削減目標の策定や進捗調査を義務として受け入れ、国際的な公平感を保てたからだ。協定を批准した国は今月6日時点で169か国・地域と、全加盟国・地域の9割近くに達している。

パリ協定と比べると、日本が議長国として合意作りに奔走した京都議定書は公平感を欠いたため、その先進性を評価する声と、不平等条約で失敗だと批判する意見が混在する。

中国、インド、ブラジルなど温室効果ガス排出量を急増させていた新興国が削減義務を負わなかったうえ、先進国として削減義務を負うアメリカが早々に離脱したことが、京都議定書の評価に響いたことは間違いない。温室効果ガスの排出削減効果にも、公平性にも、疑問符がついたからだ。

とりわけ、2度の石油危機を経験して、省エネの観点から世界で最も排出削減が進んでいた日本では、批判が少なくなかった。

産業界を中心にカラカラに乾いた雑巾を絞るような削減努力を強いられ、その削減過程で投資ファンドに食い物にされながらも、海外から排出権を購入するなどして目標の達成を目指した。それでも足りず、ペナルティを支払う破目になりかねないと悲鳴があがった時期もあった。

その後、リーマンショックに伴う景気後退でエネルギー消費が落ち込んだため、結果として格好がつく形になった。東日本大震災という不慮の事態により、ことなきを得た面もあった。それでも、排出削減目標の達成を目指す一連の過程で、日本のエネルギー消費型産業は被害者意識のかたまりになってしまった。

京都議定書の策定過程では、環境省官僚としては突然変異とでも言うべき剛腕の担当課長が登場した。「儲からない高炉を閉めれば、排出権売却収入で潤う」などと直談判し、円高不況に苦しむ大手鉄鋼会社幹部らを説得、日本国内での議定書の批准に漕ぎ着けたというエピソードもある。

そのことを筆者が本格的に報じようとしたところ、上の談判の陪席者から「あの日、当社幹部は高炉の廃炉に伴う人員整理問題で頭がいっぱいで反論しなかっただけ。決して了解したわけではない」と強硬な抗議を受けたのも、この時代のことだった。

パリ協定の交渉段階では、世界最大の温室効果ガス排出国であるにもかかわらず、協定への参加に慎重な姿勢を取り続けた中国が、最終的に中国なりの削減目標を公約。すべての国が一定の義務を負うことが担保されたことは、協定の合意に大いに寄与した。