Photo by GettyImages
企業・経営 週刊現代

元側近たちがいま明かす「孫正義が見ている壮大な景色の正体」

10兆円の投資先をみればわかる

悩んでいる時ほど、遠くを見よ――。この男はいつも、自分にそう言い聞かせているのだという。ソフトバンクグループを率いる稀代のカリスマ経営者。その視線の先には壮大な景色が広がっていた。

「通信が本業ではない」

11月6日、ロイヤルパークホテル(東京都中央区)の巨大ホール。この日開催された2018年度3月期の中間決算会見に登壇したソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は、いつものようにこう吹いてみせた。

「ソフトバンクの本業はなにか? 私は通信が本業だと思ったことは一秒もない。ソフトバンクの本業は情報革命業。地球上にはじめて生まれた業態の会社である」

この日の孫氏は勢いそのままに、「ソフトバンクは1ヵ所にとどまる会社ではない」と断言。

巨大ビジョンにプレゼン資料を映し出しながら、通信のみならず、ロボット、Eコマース、医療などさまざまな事業へと投資を加速させると次々発表し、「ソフトバンク1社で、世界全部のベンチャーキャピタルが1年でやった投資をやっている」と驚きの実情を明かした。

Photo by GettyImages

ネイビーのスーツに赤いネクタイを締めた孫氏は、この朝、同じく「赤ネクタイ」がトレードマークで来日中のトランプ大統領と面会していた。

対米投資でアメリカの雇用に貢献していると伝えたら、「マサ、お前は素晴らしい」と褒められたとのエピソードを披露すると、会場はどよめいた。いったい、この男はどこへ向かおうとしているのか――。

今回本誌では、そんな孫氏の「頭の中」を最もよく知る2人に話を聞いた。嶋聡氏と三木雄信氏。ともに社長室長を務め、孫氏を間近で見てきた側近中の側近である。

まず気になるのは、孫氏がいま最も力を注いでいる「10兆円ファンド」プロジェクトについて。ソフトバンクが今年5月にサウジアラビア政府などと立ち上げたと思ったら、半年足らずで世界各国のベンチャー約20社に平均1000億円規模を次々に投資し、世界のビジネスエリートたちの度肝を抜いている。

その投資先はインド、アメリカ、中国など国も業種もバラバラなので「脈絡がない投資戦略」と批判する声もあるが、実はそうした視点では孫氏の狙いを見誤る。

 

孫氏はある明確な指針をもって、投資先を選別している。意外なことにそのキーワードは、あの財閥王ロックフェラー。嶋氏が明かす。

「ソフトバンクがかつて再生エネルギー事業に参入すると決めた時、孫さんから『ロックフェラーがどうして世界を制覇できたか知っているか』と聞かれたことがありました。

なぜですかと聞くと、『彼は石油をおさえたからだ』と言うんです。孫さんが目指しているのはまさにこれ。

ロックフェラーは第2次産業革命で大活躍した事業家ですが、いま世界が第3次産業革命の前夜にある中、孫さんは現代のロックフェラーになろうと考えているんです。

10兆円ファンドの投資先を仔細に見ればそれは一目瞭然です。そもそも産業革命とは、『エネルギー』『輸送』『コミュニケーション手段』が大きく転換することで起きるもの。

当時は石炭が石油へ、鉄道が自動車へ、印刷から電話へと転換していく中、ロックフェラーはその石油、自動車、通信の3事業をおさえて大成功した。

孫さんはその手法をまねて、次世代のエネルギー、輸送、コミュニケーションの覇者になろうとしている」

新生・ブルーバックス誕生!