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「レイプされて生まれた子を愛せますか」ある母親の深刻な問いかけ

育てられない母親たち【12】

過去の悪事をネタに強請られる

望まない妊娠をして生まれた子を、母親は心からかわいがることはできるだろうか。

厚生労働省の調査では、生後1ヵ月以内に虐待死された赤ん坊の約七割が「望まない妊娠」で産まれた子供だったことが明らかになっている。

ただ、望まない妊娠で生まれた子の大半は、殺されることなく、成長している。母親はそんな子供とどう向き合うのだろうか。

今回紹介するのは、娘の愛情を注げず、子育てを止めた女性だ。彼女はこう言った。

「うちの娘は、レイプで生まれた子なんです。だから絶対に好きになれなかったんです」

どういうことなのか。彼女を通して「望まない妊娠」の末路の一つを見てみたい。

 

菊池志保理(仮名)が結婚したのは、28歳の時だった。大学を卒業した後、IT関係の会社に就職。一年余りで止めた後、いくつかの職を転々としていた。そんな時に、あるイベントで知り合ったのが、夫である勝通(仮名)だったのだ。

結婚後、志保理は家庭に入り、勝通だけが仕事をつづけた。できるだけ早く子供をつくりたいということで「妊活」をすることにしたのだ。だが、志保理には1つの秘密があった。結婚して間もない頃から、昔の恋人の田沼征一郎(仮名)に呼び出され、肉体関係を強いられていたのである。

ことの経緯はこうだ。

征一郎と付き合っていたのは、大学2年生から3年生のことだった。当時、志保理は大学に通いながらクラブに入り浸っていた。そこで出会ったのがDJをしていた征一郎だった。付き合って間もなく、征一郎からドラッグを教わり、一緒にやるようになった。

ただ、2人は20歳そこそこの学生でお金がなかった。そこで、志保理は征一郎にそそのかされ、重度の依存症のAという男性をだまして、彼が持っているドラッグを盗んだことがあった。

大学3年の終わり、征一郎が友人とともにドラッグの所持で逮捕された。志保理はそれを知って自分も逮捕されるのではないかと怖くなり、夜の世界から足を洗うことにした。征一郎と別れ、大学にまじめに通い、就職活動をはじめたのである。

社会に出た後、志保理はごく普通の会社員としてまじめな生活をしていた。勝通と結婚してからは、子供を産んで幸せな家庭を築くのが夢だった。

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だが、入籍した数ヵ月後、征一郎が突然SNSを通じて連絡をとってきた。重大な話があるので会いたいと言われた。家へ行くと、征一郎は重度の薬物依存症になっていた。あれから一度つかまって刑務所へも行ったという。彼は言った。

「なあ、ヨリを戻そうぜ」

志保理は結婚していることを理由に断った。すると、征一郎は彼女をレイプした上で、「Aが暴力団員になった。俺の言うことを聞かないと、昔ドラッグを盗んだことをバラすぞ」と脅した。そして、志保理を毎週のように呼び出しては性行為を強いるようになったのである。志保理は嫌だったが、過去をバラされるのが怖く、従わざるをえなかった。

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