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週刊現代

「古都のほんとの良さ」は、ひと月10日暮らして初めて分かる

ときどき京都、の流儀

半京都人になって6年経ちました

―永江さんは6年前から、普段は東京で生活を送りながら、ひと月のうち1週間から10日ほどを京都の町家で過ごす「ときどき、京都」の暮らしを続けられています。

きっかけは「お茶」なんです。趣味が昂じて、茶室がある家が欲しくなったんですね。自宅を改装するのは難しく、小さくてもいいから別邸が欲しいと考えるようになりました。妻と「東京にこだわらなくてもいいよね」と相談し、ふたりでよく旅行した京都で物件を探すことにしました。

探し始めて3ヵ月で今の京町家を見つけて、すぐに決めてしまいました。茶室を作るなど改装に1年ほどかけ、2011年4月に住み始めて、今に至ります。

―『京都ぎらい』が話題になるなど、京都の人々には「いけず」でとっつきづらいイメージもあります。

私のような「半分京都人」から見ると、「いけず」には京都人の計算があると思うんですよ。つまり、「いけず」の看板を掲げていたほうが、「小さな親切でも大きく感じてもらえる」と思って、利用しているんじゃないかと。

私がはじめて「いけず」を食らったのは、暮らし始めて早々、茶道具を探していた時ですね。お店を教えて欲しいと訊ねたところ、「心当たりがありませんなあ」と濁される。本当に知らないのではなく、「まだ付き合いの浅いあなたには教えられない」ということなんですね。

結局、「よほど困っているようなので」と2~3店を教えてくれたのですが「うちの名前は出さんといてくれやす」と念を押されました。京都人の腹の底を知るには、少々修行が必要です。

 

―普通の旅行ガイドとは違った視点の「京都の楽しみかた」をいろいろ紹介されていますが、いま見頃の紅葉にも、京都の人は、観光客とは違うこだわりがあるとか。

晩秋になると、「紅葉は、どこ行かはったんですか?」と聞かれるので、まだ半分よそ者、観光気分と思われているのかと考えていました。でも、それは違って、京都人にとって紅葉は「場持ちする話題」なんですね。誰もが一家言あり、品評するのが日常なんです。

私も当初は清水寺や東福寺など名所を見ていたのですが、人が多すぎてゆっくり回れない。個人的な穴場は府立植物園です。ここは、古くからの原生林が残された珍しいスポット。北山通から近い鴨川沿いで、散歩で寄るのに絶好です。生粋の京都人にも「通どすな」と褒められました(笑)。

地元の人の肌感覚に近い京都

―京都といえば寺社仏閣。しかし、外国人観光客からは「expensive(高い)」という声も聞かれるそうですね。

ええ。京都のお寺は多くが拝観料を取りますし、紅葉の時期は値上げするお寺もあって、寺巡りにはカネがかかる。経済事情もあるのでしょうが、少し残念です。

とはいえ、なんだかんだいっても、やはり得難い魅力があります。私がよく散歩するのは、下御霊神社。梅の花がかわいい。観光客には北野天満宮や平安神宮の桜が人気ですけれど、寒空に映える梅もいいものですよ。

―本書では地元の人々が通うお店についても、存分に紹介されていて、食欲をそそられます。

たとえば、京都の人は贔屓の漬物店があります。「我が家は代々○○で」というふうに。私のイチオシは、四条木屋町の『村上重本店』と、二条川端の『加藤順漬物店』。

ただ、住んでみてわかったのですが、京都にはよその人が知らない文化が多い。たとえば、東京の人は京都の「おばんざい」を妙にありがたがりますよね。でも、地元からすれば、あれは家庭料理。口の悪い友人などは「あんなん、カネもろて人さまに出すような料理やないで」と言う(笑)。

別に、気にしすぎることはないですが、「観光客向け」ではない路地裏の中華料理屋などを探すと、より地元の人の肌感覚に近い京都が楽しめます。