医療・健康・食

ナマズはなぜ「地震予知ができる」といわれるのか

驚くべき生態の秘密

まるでGPS!

池沼や湖に生息するナマズ。雑食で貪欲と言われるが、視界の利かない濁った水の中で、どのようにして「食事」にありつくのだろうか。その秘密が実は「味覚」にある。

脊椎動物が味を感じる器官を「味蕾」という。舌をよく見ると小さな突起がたくさんあることがわかる。これが味蕾だ。ヒトの舌には5000~7000個の味蕾がある。

ちなみに肉食の哺乳類は味蕾が少なく、ネコは500個程度しか持っていない。肉食動物はその場で動物を殺して食べるため、毒見をする必要がないのだ。

それに対して草食の哺乳類は、味蕾の数が非常に多く、ウシは2万5000個もの味蕾を持っている。これは、草食動物はさまざまな種類の草が入り交じった草原から毒となるものと栄養になるものを峻別する必要があるためだ。

このように食べ物の毒見役を担う味蕾は、舌などの口腔内に分布しているのが一般的だ。しかし、ナマズはこの味蕾を全身に持っている。しかもその数、20万個。ヒトの約40倍の数の味蕾を有しているのだ。ナマズは眼の代わりにこの味蕾を活用して、エサとなる小魚を探している。小魚がうっかりナマズに触れれば、その存在は瞬く間に感知されてしまう。

それだけではない。遠くにいる小魚の「味」が水流にのって漂ってくると、ナマズはその味を頼りに、小魚を追っていくことができる。体表の味蕾により、味の濃いほうに進めば、ターゲットが見つかるしくみになっているのだ。その際、小魚の味が、ヒゲの味蕾と尾びれ近くにある味蕾のそれぞれに到達するまでの時間差を計ることによって、小魚のいる位置を正確に割り出すことさえできる。

ナマズと言えば地震を予知するという俗説が古くからあるが、それはこうした鋭敏な感覚を持っていることが知られていたからかもしれない。

それぞれの動物が感じる「世界」は、どのような感覚器を持っているかによって違ってくる。足元の生物に少し目を向けるだけでも、その多様性の面白味を「味わう」ことができる。(羽)

『週刊現代』2017年11月25日号より

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