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習近平がトランプに呑ませた「スーパー・ビッグディール」の中身

そして北朝鮮空爆は「延期」された…
近藤 大介 プロフィール

トランプの急所は「家族」と「カネ」

おしまいは、同日夕刻に、人民大会堂の「金色大庁」で開かれた晩餐会での、習近平主席とトランプ大統領のスピーチである。

習近平: 「栄誉あるトランプ大統領夫妻、友人たち、こんばんは。中国人は、『友あり遠方より来る、また楽しからずや』(孔子)と言う。私も心より歓迎したい。

両国の間には巨大な太平洋があるが、それは両大国の往来を妨げるものではない。45年前、ニクソン大統領が訪中し、中国とアメリカの門を再開した。ニクソン大統領は中国を離れる時、『この一週間で世界を変えた』と述べた。まさにその時から、何代にもわたるリーダーたちの歴史的な蓄積が、両国関係を支えてきたのだ。そしてそのことは、両国の国民に恩恵をもたらしたばかりか、本当に世界をも変えた。

まさに光陰矢の如しだ。45年の間に、冷戦は過去のものとなり、世界は格段に発展を遂げた。そして中国はと言えば、改革開放と中国の特色ある社会主義が、新時代を切り開いた。

両国は一度は敵対関係に陥ったけれども、いまや共通の利益を持つ仲間であり、国際社会の平和や発展に、共に責任を負っている。

今回のトランプ大統領の国事訪問もまた、歴史的な重要性を持つものだ。この二日間、われわれ二人は、どうやって中国とアメリカが機会を掴み、困難を克服し、中米関係の新たな境地を切り開けるかを、深く話し合った。そうやって、中国とアメリカの関係を進展させる青写真を描いた。

その結果、両国はライバルではなくパートナーであるという認識で一致した。共に働き、両国と世界に貢献していこうということでも一致した。

私はまた、第19回中国共産党大会についても、トランプ大統領に説明した。党大会を経て、中国はさらにアメリカや他国と協調していく。中国の夢は、世界の夢と密接につながっているのだ。

中国の古人は、『志あれば届かぬ所はなく、山も海も限りとはならぬ』と説いた。ベンジャミン・フランクリンも『忍耐力のある者なら、したいことは何でもできる』と述べた。

これは私の固い信念だが、中米関係が一定のチャレンジに直面しようとも、発展の潜在力は無限である。堅忍不抜の精神をもってすれば、両国関係に新たな一ページを刻めるのだ。

乾杯!」

〔PHOTO〕gettyimages

トランプ: 「本当に素晴らしく、特別な二日間だった。習主席の寛大な言葉に、あなたと彭麗媛夫人の素晴らしいもてなしに、私とメラニアは、感謝を申し上げる。

昨日、中国の豊かな文化と壮大な精神の誇るべきシンボルである故宮を参観した。あなたの国は、何千年もの歴史遺産が息づいている。

そして今日、中国の代表団は、まさに人民大会堂のこの場所で、素晴らしい栄誉を見せてくれた。両国にとっての歴史的瞬間であり、両国と世界に平和と繁栄をもたらすものだ。

われわれは東西というかけ離れた場所から来ているが、双方とも、勇気ある国民と強固な文化、未知なる危険を乗り越えていこうとする意欲に満ちた国民によって支えられている。

アメリカ人は中国の歴史や、高貴な伝統といったものを、深く尊敬している。古代の価値観は、過去にも未来にも、そして現在にも通じる美しいものだ。アメリカン・スピリットと中国の精神が立ち並んで、世界の平和や安全、子供たちへの夢をもたらすものにしていこうではないか。

まもなく、私の孫娘のアラベラが、中国の伝統歌曲を歌うビデオが映し出されるだろう。それはわれわれが、人間性と真の誇りをシェアしていることを示すものだ」

〔PHOTO〕gettyimages

前方の巨大なスクリーンに、アラベラちゃんが『三字経』を唱える姿が映し出された。習近平主席と中国の代表者たちが、盛大な拍手を送る。トランプ大統領は半ば照れながらも、喜びを隠しきれないでいる。

そういえば前日の午後には、故宮の茶館で、トランプ大統領がおもむろに、習近平主席にiPadの画面を見せた。そこには、アラベラちゃんが中国語で歌っている姿が映し出されていて、習近平主席と彭麗媛夫人は、思わず頬を緩めた。

私はそのシーンを、日本のテレビニュースで見たが、確かにその歌は、『在希望的田野上』だった。1982年に彭麗媛が歌って大ヒットし、彭麗媛を国民的歌手に押し上げた思い出の曲である。

 

ではいったい誰が、この曲をアラベラちゃんに練習するよう仕向けたのか。私は、仕掛け人は崔天凱駐米大使だったと見ている。

ワシントンDCで、崔天凱大使の公邸と、アラベラちゃんが暮らすクシュナー家とは、歩いても行ける目と鼻の先である。今回の大統領訪中の「演出」は、習近平主席や楊潔篪国務委員(中国外交トップ)の信任が厚い崔駐米大使と、トランプ大統領の娘婿であるジャレド・クシュナー大統領上級顧問との間で、練られたものと思える。

その証拠に、同日朝に人民大会堂前でトランプ大統領の歓迎式典が開かれた時、中央委員でもない崔天凱大使夫妻は、出迎えた習近平主席以下、17人の中国側最高幹部の中で、異彩を放っていたからだ。すなわち米中両側が、最大の功労者と見なしている様子が窺えたのだ。崔大使は、本来なら来年3月に外相に就任する人物だが、先月65歳を迎えてしまったため退職となる。

ともあれ、中国政府は、トランプ大統領の急所は、「家族」と「カネ」にありと見て、こうした露骨とも言える外交を展開したのである。実際、トランプ大統領の頬は緩みっぱなしだった。

傍から見ていても、習近平主席とトランプ大統領は、オバマ大統領の時と較べて、はるかにケミストリーが合っている。両首脳とも、いわゆるエリートでなく、頭脳明晰に立ち回るタイプではない。語彙力もいい勝負だ。