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習近平がトランプに呑ませた「スーパー・ビッグディール」の中身

そして北朝鮮空爆は「延期」された…
近藤 大介 プロフィール

習近平が言う「新型の大国関係」とは

続いて、トランプ大統領と習近平主席は、共同記者会見に臨んだ。今回の米中首脳会談では、2009年のオバマ前大統領の初訪中時に発表したような共同声明はなく、記者の質問を受けつけない記者発表のみ行った。それが、「トランプ・習近平時代」のスタイルというわけだろう。

習近平: 「この二日間、私とトランプ大統領は、中米関係と共同の関心事である重大な国際問題、地域の問題について、深く意見交換してきた。その結果、今後一定期間の両国関係を発展させる一連の重要な共通認識に至った。

双方は、外交安全・経済・社会と人文・法治とネットの安全という4つの高官対話が十分に作用していることに同意した。また、両軍の各クラスでの対話の強化、法治とネット安全分野での提携強化でも一致した。

両国は世界の2大経済大国であり、次なる経済提携計画を策定していく時期に来ている。両国のエネルギー、インフラ建設、『一帯一路』建設などの分野での提携は、両国の国民に莫大な恩恵をもたらすだろう。

朝鮮半島の核問題に関しては、中米双方が、朝鮮半島の非核化と、NPT体制の維持と保護に尽力していく。対話と交渉による問題解決を目指し、朝鮮半島と北東アジアの長治久安への道を探っていく。

中米の共通利益は、相違点よりもはるかに大きく、互いの主権と領土を尊重しながら、それぞれの発展の仕方を尊重していくべきだ。中米は、アジア太平洋地域に重要な影響を及ぼす国である。私が大統領に言ったのは、太平洋は中米両国を受け入れられるだけの広さを持っているということだ。共同で地域の平和と繁栄を促進していこうではないか。

今回のトランプ大統領の国事訪問は、成功した歴史的な訪問となった。今回の首脳会談で、今後一定期間における中米関係の発展図を明確に示した」

〔PHOTO〕gettyimages

トランプ: 「習主席、私はあなたに、さきほど午前中に、信じられない歓迎セレモニーを開いてくれたことに対して、感謝を申し上げたい。本当に記憶に残る印象的な、そして絶対に忘れがたいものとなった。

メラニアと私は、あなたの国を訪れる栄誉を受け、悠久の歴史、ダイナミックな人々、そして繁栄した文化に触れた。また、彭麗媛夫人には、壮大な故宮を案内してくれて感謝している。あなたの国民は現在と過去を誇っており、またあなたのことも誇りに思っている。

先日の大成功に終わった第19回共産党大会に関して、あなたに祝意を述べたい。今後ますます両国関係は発展していくだろう。

今日、習主席と私は、北朝鮮の完全な非核化のための双方のコミットメントについて議論した。過去の政権の過ちを繰り返さないため、多くのことを議論した。国連安保理の対北朝鮮制裁決議の完全な履行、北朝鮮が危険な道を進まないための経済的圧力の増加などだ。

責任あるすべての国々が共に参加し、狂気の北朝鮮の体制を、軍事的及び経済的にストップさせていかねばならない。そしてこの地域と世界を、大変深刻な核の脅威から解放するのだ。平和を勝ち取るには、総合的な行動、総合的な力、総合的な貢献が必要だ。

こうした問題に加えて、経済関係の改善についても話し合った。われわれは均衡の取れた、フェアで受け入れられるような中国との貿易関係を望む。

その中には、中国市場へのアクセスが制限を受けていること、技術移転を必要とされること、つまりアメリカ企業の中国国内でのフェアな競争を妨げるようなことも含まれる。アメリカ企業の知的財産権の保護や、アメリカ人労働者に機会を与えていくことについてもコミットしていく。

同時に、あなた(習近平主席)や中国との関係は、私とアメリカ国民にとって非常に重要なものだ。いまサインするのを見てきた、膨大な、信じられない雇用を生む契約は、それら大企業にとって、そしてわれわれにとって、とても、とてもよいスタートとなった。

地域の安定と平和へのコミットメントの部分は、アメリカは、経済の自由や、個人の権利や、法の支配への改革を推進していく。

巨大な責任が、われわれの肩にのしかかっている。国家主席よ、これは本当に大きな責任だ。われわれはさらなる高みを目指そうではないか。

重ねて感謝申し上げる。あなたは、とても特別な方だ。中国の遺産に敬意を表し、その偉大さ、大きな可能性と潜在性を祝福する。

これから数ヵ月間、数年間、両国はさらに強固な関係を築いていきたい。そして中国とアメリカの国民が、さらに友好な関係を築けるようにしていこうではないか」

 

いつ出るかと思っていたのが、習近平主席による「新型の大国関係」宣言だった。この言葉を習主席が初めて使ったのは、2013年6月の訪中時だったが、カリフォルニアでオバマ大統領に、あっさり無視されてしまった。

「新型の大国関係」とは、極限すれば、米中で太平洋を二分割しようという提案である。興味のある方は、拙著『パックス・チャイナ 中華帝国の野望』を参照いただきたい。

オバマ時代の晩年にあたる2015年からは、中国による南シナ海の軍事要塞化とサイバーテロを巡って、米中が険悪になり、「新型の大国関係」は封印された。それを今回、習近平主席は、「太平洋は米中2大国を包容するほど広い」という婉曲な言い回しで、復活させたのである。

結果は、トランプ大統領も、2009年のオバマ大統領と同様、無反応だった。だが、オバマ大統領が否定的無反応だったのに対し、トランプ大統領は肯定的無反応だったと、中国側は解釈したのである。