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防衛・安全保障 週刊現代

国家をも揺るがすナショナリズムはいつどのタイミングで生まれるか

カタルーニャ分離独立から考える

ナショナリズムとは何か

スペインのカタルーニャ地方で分離独立の動きが本格化している。カタルーニャ自治州政府は10月1日、スペインの憲法裁判所の反対を押し切って住民投票を実施した。4割の投票率ではあったが9割が独立に賛成した。10日、プッチダモン同自治州首相は、「独立宣言」に署名し、スペイン中央政府との対立は決定的段階に入った。

21日、スペインのラホイ首相は、閣議でカタルーニャ州の自治権を停止する意向を表明した。カタルーニャ自治州の動向はスペインのバスク自治州、英国のスコットランド、ベルギーのフランドル地方などの分離独立運動にも影響を与えかねない大きな出来事である。

この機会に、分離独立の動因となっているナショナリズムについて、この問題の古典である英国の社会人類学者アーネスト・ゲルナーの『民族とナショナリズム』から学びたい。

ナショナリズムとは文化を共有する人々で自分たちの統治を行いたいとする運動だ。文化を形成する要因はさまざまだが、言語がとても大きな影響を与える。では世界に言語はどれくらいあるのか。ゲルナーの記述を見てみよう。

 

〈八〇〇〇という数字に満足しようではないか。この数字は、言語のかなり恣意的な見積もりに基づいて、ある言語学者がおおざっぱな数字として私に示したものではあるが。

世界中の国家の数は目下二〇〇台である。この数字に、すべてのイレデンティストのナショナリズム〔イレデンティズムはもともとイタリアの「失地回復主義運動」を意味するが、ここでは現状に不満を持つ行動主義的なナショナリズムの意味で用いられている〕を加えてもよかろう。

このナショナリズムはまだ国家を獲得しておらず(将来もそうなることは決してないかもしれない)、その方向に向けて苦闘しているのだから、潜在的なというだけでなく現実のナショナリズムの中に数えられるべき正当な権利を持っている〉

8000もの言語を用いる集団が潜在的には民族となり得るのである。他方、現在の国連加盟国は193だ。日本が国家承認しているバチカン、コソボ共和国、クック諸島及びニウエは国連未加盟だが、国家としての実体を持っている。

ゲルナーは国家と民族の関係についてこう述べる。

〈思いやりを持って、地球上の合理的に有効なナショナリズムの数をその四倍、つまり八〇〇としておこうではないか。この数字は事実によって検証される数字よりもかなり多めだとは思うが、よしとしよう。

このおおざっぱな計算からえられる結果は、一〇の潜在的ナショナリズムに対して、有効なナショナリズムはただ一つしかないということである! この驚くべき比率には、いかなる熱烈な汎ナショナリストも―そのような人物が存在するとして―失望することであろう。(中略)はるか彼方で一つのナショナリズムが醜い頭をもたげるごとに、その翼の陰に九つのナショナリズムが待機しているということだろうか。

これまで人類を悩ましてきた爆撃、受難、住民の入れ替えや、いっそうひどいことが、なお一〇回繰り返されるということなのだろうか。