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遅々として進まない自由貿易協定「日本が悪者」にされてしまった理由

いわく「要求レベルが高すぎる」
町田 徹 プロフィール

まずは合意を取り付けるべき

幸か不幸か、中国もこの交渉では失態が目立つようだ。

中国バブル崩壊の影響を最小化したいという事情もあったのだろうが、インドネシアなど東南アジア諸国に猛烈な輸出攻勢をかけて、現地産業に大きな打撃を与えている。各国は、これ以上中国の言い分を受け入れて自由貿易を進めると、国内産業が壊滅しかねないと中国不信を募らせているという。

中国の新通商秩序の構築戦略の軸は、あくまでも「一帯一路」構想だ。その意味では、中国にとってRCEP交渉は、自由主義陣営による中国包囲網ともいうべき高いレベルの協定の誕生を牽制する場に過ぎないのである。

また、中国の一帯一路構想に含まれるパキスタン回廊構築構想は、インドにとっては家の中に土足で踏み込まれるような話で、反中感情を強める原因になっているという。そのインドが、国内で保護すべき産業が多過ぎて、RCEP交渉のお荷物と言われていることも見逃してはならないだろう。

 

ここは思案のしどころである。

RCEPについては、この際、高いレベルの協定を目指すよりも、関税解除率などが多少下がってもよいから、各国間での大筋合意こそ肝要になっているのではないだろうか。

茂木敏充・経済産業相ベトナム・ダナンでの閣僚会合に参加した茂木敏充・経済産業相 photo by gettyimages

そうした発想に立てば、中国不信を強めるインドネシアや反中感情を募らせるインドを推進派に衣替えさせることが可能で、推進力を失っていたRCEP交渉も活性化するはずだ。高いレベルの協定は、発効後の改定で目指したほうが円滑に実現できるはずである。

アメリカ抜きのTPP交渉で大きな成果をあげたいまこそ、立ち止まって、政府の通商交渉戦略を再点検する好機である。