防衛・安全保障

知らなければよかった「緩衝国家」日本の悲劇。主権がないなんて…

日米地位協定の異常性を明かそう
伊勢崎 賢治 プロフィール

日米地位協定の”異常性”

日本は、韓国のように、「開戦」の直接の被害国にはならない。その意味で、日本はドイツと同等であり、日米地位協定は典型的な「平和時」の地位協定である。

「戦時」➡「準戦時」➡「平和時」と時間が経つにつれ受入国の「主権度」は着実に回復していくものであるが、国際比較をすると日本の対米関係の特異性が見えてくる。

その集大成を、このたび敏腕ジャーナリスト布施祐仁氏との共著として上梓した(『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』)。本書の中で、日米地位協定には、以下の”異常性”があると結論する。

①日米地位協定は、「戦時」でも「準戦時」でもない「平和時」の協定なのに、他の国の地位協定と比べてダントツに日本の「主権」が不在であること。

「互恵性」が基本のNATO諸国、二国間でもそれを獲得しているフィリピンと比べるどころではない。

今回(2017年11月)のトランプ氏の訪日では歴代では初めて大統領機は日本の管制を経ずに横田空域を通って横田基地に着陸したが、「主権度」がより低いはずの「準戦時」にあたるアフガニスタンでも、こんなことはありえない。

②日米地位協定は、在日米軍の行動に起因する国民の生命や財産の安全に対する脅威を取り除く日本政府の能力を損なっていること。

つまり、国民の生命や財産を守ることは主権国家の政府の最大の責任であるが、それが果たせない。

北朝鮮の飛翔体は、領空侵犯ではないとはいえ、日本の上空を通るのだから落ちる可能性はゼロではない。だからJアラートを使用する必要性は否定しない。しかし、「管制不可能」ということでは同じ米軍機への無感覚との対比に目眩を覚える。

同じく今回のトランプ氏の訪問では、北朝鮮への攻撃の際、アメリカが韓国政府と日本政府に「事前通知」するか否かが話題になった。上記のトルコに加えて、「主権度」が低いはずの「準戦時」の2008年のイラクでも、イラク政府は、米軍がイラクから他国を攻撃することを禁止する条項を地位協定に盛り込むことに成功した。

繰り返すが、アメリカは開戦の被害の当事者ではないのだ。開戦の被害の当事国が、自国国民の安全の観点から、米軍の行動を統制するのは、当然すぎて言うまでもないことなのだ。

しかし、世界で唯一、日韓には、これが無い。

韓国は「準戦時」であることを考慮したら、日本は、「平和時」ではあってはならない、国民の安全を第一に考える主権を放棄した唯一の国である。

「緩衝国家」日本の悲劇は、それを盾にしているアメリカが開戦の被害の当事者ではないのに、それでもアメリカの盾になることが日本自身の盾になると思い込む理由を日本自身が見つけ続けること。これに尽きる。

主権なき平和国家