防衛・安全保障

知らなければよかった「緩衝国家」日本の悲劇。主権がないなんて…

日米地位協定の異常性を明かそう
伊勢崎 賢治 プロフィール

アメリカの軍事同盟であるNATO諸国。特にその中でも、冷戦後のドイツは「戦場」ではなくなっている。それでもアメリカ軍は、冷戦後の対ロシア、そして対テロ戦という新しい枠組みの中で駐留を続けるが、ドイツは「開戦」の直接の戦場もしくは被害国にはならない。

これが「平和時」の受入国、そして地位協定である。

アメリカの譲歩

「平和時」においては、受入国の「主権」は完全に回復している。「戦時」では”やりたい放題”できても、「準戦時」に地位協定で与えられた駐留特権でも受入国の国民の「主権意識」が許さなくなってくる。「平和時」においてはなおさらである。

そこで、アメリカが経験的に譲歩してきたのが「互恵性」の導入である。つまり、外交特権のように、受入国の軍隊がアメリカに駐留する場合にも、同じ特権を認める方式である。実際は、アメリカ軍の駐留が圧倒的に大きいのであるが、”法的には対等”とするやり方である。

*「互恵性」に関しては、下の2本の記事を参照されたい。
世界的にもこんなの異常だ! 在日米軍だけがもつ「特権」の真実 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48780
日米関係の「安定」を本当に願うのであれば、まず地位協定を改定せよ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50705

アメリカは、この「互恵性」の導入を、受入国社会の反米軍感情を制御する効果的な措置と考えてきた。1992年のフィリピンなどで、反米感情が高まり完全撤退する羽目になったことを外交的な敗北と捉え教訓としているからだ。

旧敗戦国のイタリア、ドイツを含むNATO諸国のような「平和時」の受入国とアメリカの地位協定上の関係は「互恵性」がベースになっている。

別の言葉で言うと、この互恵性が「同盟」なのだ

二国間の関係でも、フィリピンのように裁判権の互恵性を獲得してる国がある。つまり、フィリピン軍がアメリカに駐留し、例えば公務の自動車で移動中にアメリカ人を跳ね死亡させた場合、アメリカ国内の事件でもアメリカに裁判権はない。

このようなケースが実際に起こる確率は米軍が起こす事故に比べてゼロに等しいとしても、それを想定して、法的な対等性を外交関係に表現する。主権国家同士の付き合いなら、これが当然なのだ。ちなみに、日米間に、これは存在しない。

 

地位協定で合意される「互恵性」は裁判権だけではない。駐留軍が使う基地、空域、海域の使用/管理権にまで及ぶ。互恵性においてアメリカは「自分が被りたくないことはできない」から、「横田空域」のようなものは、その概念すら存在しない。

受入国に何を持ち込むか、どんな訓練をやるか、それらで有事に何をやるかは、互恵性を平等に確保する「主権」の下、受入国による「許可制」である。

念を押すが、アメリカとの「協議」ではない。受入国の「許可」である。

2003年、米英軍によるイラク侵攻の時にNATOの同盟国であるトルコ政府は、駐留を許していた米軍のイラク攻撃を許可しなかった。イラクが報復の反撃をした場合、直接の被害国になるのは隣接するトルコである。アメリカではない。自国の安全と国防の観点から、当然の決断だ。たとえ駐留米軍が、自国軍の戦力を補うものであっても、だ。

同様に、イタリア政府も、アメリカが1986年にリビアを空爆した時、国内の基地からの出撃を拒否した。リビアと地中海を挟んで一番近く、そして規模の大きい米軍の拠点であるにもかかわらず、だ。