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宇宙科学 週刊現代

プラネタリウム・クリエーター大平貴之さんが影響を受けた本10冊

天上に思いを馳せ「人類」を見つめ直す

ミーシカに自分を重ねていたあの頃

小学生のときは漫画や小説よりもハウツー本が好きでした。百科事典や理科実験の説明本が図書室にあり、夢中になって読んで、科学の実験や工作、植物の栽培などに没頭していました。少し変わった子供でしたね。

本で調べた知識を実践することの楽しさを覚えたのがこの頃。10歳の時、初めてプラネタリウムを自作することにもつながります。

そんな小学校時代でしたが、数少ない物語の読書で印象的だったのが『ぼくとわんぱくミーシカ』。ロシアが舞台で、主人公にはミーシカという友達がいます。

彼がとんでもないいたずら小僧で、花火を自作したり、時計を見ると分解したり。主人公は「弱った弱った」ともらし、その奔放ぶりに振り回されながら冒険や新しい実験をして一緒に遊び、それが楽しい思い出になっていきます。今思えば、ミーシカに自分を少し重ねていたのかもしれません。

小学校高学年の頃、あるテレビ番組を見て衝撃を受けました。それが3位に挙げている『コンタクト』の著者、天文学者のカール・セーガン先生が監修し、自ら出演していた『コスモス』という科学啓蒙ドキュメンタリー。書籍にもなりましたが、これがめちゃくちゃ格好良かった!

科学が解き明かした宇宙の神秘をドラマチックに表現していて、魅了されました。以来、セーガン先生の大ファンに。『コンタクト』はそれを知った父が中学の時に見つけてきてくれた本。読んで感動しました。

 

天文台で研究を行う女性科学者が、他の星から届いた謎の電波を解析してみると、宇宙船のような機械の設計図が示されていることがわかります。その機械を完成させ、作動させると発信元の惑星までワープ。人間とは別の知的生命体に遭遇する、いわゆるSF物です。

ただ、そこはセーガン先生、作品に通底する科学的態度がなんともロマンチック。宇宙の物理法則は創造主の何らかの意思によるという独特の世界観がある。さらに、真理を探究する人間の心の美しさが際立っている作品です。

冒頭から心を鷲掴みに

1位に挙げる『星を継ぐもの』も同じくSFです。高校の頃、図書館で何気なく手に取って気に入り、すぐに買いました。

月面探査で宇宙服を着た死体が発見されます。その死体を調査したところ、5万年前の人間であることが判明する、というところから物語が動き出し、冒頭から心を鷲掴みにされます。

執筆された'70年代当時の科学的事実と、架空の科学を織り交ぜ、天文宇宙の観点から社会や歴史、経済、宗教など人間のすべての活動を包括的に解き明かしていく。非常に大きなスケールで、ある種の推理小説にもなっているんです。とても新鮮で惹かれました。

この小説は『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』と続く3部作で、僕の中では不可分の一つの作品としてベストワン。読み進むに連れ、地球人の起源や進化の方向性もユニークかつ客観的な視点で語られます。

プラネタリウムづくりを生業にしていると、「地上の雑事を忘れられて夢があるね」なんてよく言われますが、その捉え方はやや表面的。むしろ天上の星を調べると、地上の私たち人類を見つめ直すことになる。

宇宙の中に地球があり、すべてがつながっている。プラネタリウムも単に夢を伝えるというよりは、人間自身を知るための一つのツールだと、最近、思うようになりました。その考え方のヒントをくれたのがこの本だったんです。