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『君の名は。』が現実に?隕石落下で湧く中国の秘境シャングリラを歩く

おそらく世界初の現地ルポ
青山 潤三 プロフィール

霊峰「梅里雪山」に落ちた

筆者が初めて中国を訪れたのは、1988年の早春。その前年、日本固有種の「ギフチョウ」という蝶を題材に子供向けの科学読み物を出版した際、中国固有の近縁2種に言及したのですが、当時それらの蝶の生態はほとんど解明されていませんでした。そこで、自分の目で確かめ、写真に収めなければならないと思ったのです。

でも、中国のことは何一つ知りません。そこで、筆者の本の担当編集者の友人が、たまたま「地球の歩き方」の編集に携わっていたので、その友人を頼ることにしました。当時、日本で最も中国について詳しく、最も深い愛情をもって接していた人物のひとりでした。

彼は筆者の連絡に快く応じ、全面的に協力すると約束してくれました。ただし条件がひとつある、それを守る自信がないなら、一切協力はできません、とも。そして、こう口にしました。

「絶対に中国人を信用しないこと」

以来30年、筆者はこの時の衝撃を忘れられずにいます。そしてその後、何十回となく中国(日本人がよく行く北京・上海・香港などではなく)を訪れて得た結論として、残念ながら彼の言葉は正しかったと言わざるを得ません。別に中国人が日本人を騙そうとする、と言いたいわけではありませんが、とにかく「抜けている」人が多いのです。

 

しかし、タクシーに揺られ苦労して幸福村まで着き、村に隣接する「巴拉格宗国家公風景区」を再度訪ねたのはいいのですが、以降の聞き込みでも、やはり隕石のことを知っている人は見つかりません。ひとりの女性が「はっきりこの目で見た」と教えてくれたものの、「でも落下場所は分からない。もし詳しい情報を手に入れたら、連絡してあげる」とのことでした。

幸福村の旧道沿いの町並み
いたるところで牛やロバが歩いている
村民委員会前にたむろする村の人たち

結局、筆者が当たりをつけたシャングリラ峡谷周辺では、隕石の落下地点を特定することはおろか、報道では「中国全土から殺到している」ということだったはずの、隕石ハンターの姿を見ることすらできませんでした。

ただ、聞き取りをした中には、「隕石は梅里雪山に落ちたと聞いた」という男性もいました。

梅里雪山はシャングリラの北西およそ100kmの地点にそびえ、標高6000mを越す剣山のように険しい山々が6つも連なった、チベット仏教の聖地ともされる山脈です。

霊峰の名にふさわしい神々しさ
山々の一つ・メツモ(神女峰)は標高6054m

梅里雪山は、地理的、気候的、そして文化的な条件から、全てが未踏峰という驚くべき山々として知られています。主峰の一つ・メツモ(神女峰、6054m)は、まるでマッターホルンのように急峻な山容を誇り、ひと目見れば忘れられません。

ただし梅里雪山は、1991年に日中合同隊17名が全員遭難して以降、登山自体が禁止となっています。本当にこの地に隕石が落ちたのであれば、今後も落下地点の特定・捜索は困難でしょう。

冒頭でも述べた通り、きわめて魅力的で驚異に満ちた自然環境を誇る、アジアのルーツとも言うべき地域・シャングリラ。この地は中国における筆者の最も重要なフィールドで、十数年間にわたり通い続けて多くの成果を得ています。

今回、隕石落下地点までたどり着くことはできませんでしたが(どうかお許しを!)、その不可思議さ、そして雄大さはまた稿をあらためてお伝えしたいと思っています。