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介護 成年後見制度

「重度認知症と勝手に判定され、財産権を奪われた」母娘の涙の訴え

成年後見制度の深い闇 第12回

想像してみてほしい。

あなたは、年齢を重ねて、高齢者と呼ばれるようになった。

最近、少し物忘れもあって、病院では軽度の認知症がみられると言われてしまった。

それでも、子供たちの一人と、のんびりと暮らしていた。

ところが、ある日突然、それまで会ったこともない弁護士が自宅にやってきた。そして、こう言うのだ。

「家庭裁判所の審判で、あなたに後見人がつくことになりました。私が家裁から選任された後見人です。もう、あなたにはご自分の財産を動かす権利はありません」

誰も、あなたの意見を聞かない。聞こうともしないし、意見を述べる機会もない。

理不尽だ。そう思われないだろうか。だが、いま現在、この国では、実際にこのような事態が各地で発生しているのである。

(※シリーズのこれまでの記事はこちらから

「本人の意思を尊重し…」法律の文面が虚しい現実

次にあげる動画は、自分の意思を無視されたまま、成年後見人をつけられ、それまでの生活を壊されて涙する女性の訴えである(https://youtu.be/pdbaCp7m0ZA)。

この女性の身に何が起こったのかは、後段で詳述していくが、まずは次の文章を見てほしい。

<成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない>

これは成年後見人の在り方を定めた民法第858条の記述だ。

この記述にある通り、成年後見制度の根幹は、成年被後見人(後見を受ける人、たとえば認知症の高齢者)の「意思の尊重」にある。

制度の趣旨からすると、この「意思の尊重」は、当然のことながら、家庭裁判所の後見審判開始前から行われていなければならない。

どういうことかというと、そもそも「成年後見制度を使いたいかどうか」の意思も、本人に確認する必要があるということだ。

そして、その上で、本人の健康状態と生活の実態を調べて、本人の意思に沿う形で後見を行わねばならない。

だが現実は、必ずしもそうなっていない。

 

動画で涙ながらに窮状を訴えている、東京・目黒区在住の澤田晶子さん(86歳・仮名)に、2人の弁護士が後見人としてついたのは、2017年3月9日のことだった。

晶子さんに後見人がついた経緯を振り返ると、本人意思の尊重という成年後見制度の原則が完全に形骸化してしまっていることがよく分かる。

降ってわいたような司法の判断

後見人がついた当時、晶子さんは、目黒区の一戸建てで三女と一緒に暮らしていた。

三女は、病身の父親と母親を自宅で介護するために仕事を辞め、2015年12月から同居を始めた。

三女が同居して介護することについては、両親と3人の娘が家族会議で話し合って決めたことだった。なお、三女は独身。姉2人は結婚して別世帯を構えている。

父親は大動脈瘤、母親には糖尿病の持病があり、さらに2人とも軽い認知症があった。このため世田谷区内の内科医が自宅に往診して2人を診察していた。

2016年12月、父親が大動脈瘤破裂で急死。母・晶子さんは、夫の死後も、自宅で三女の介護を受けて生活することを望んでいたが、長女と次女は以前から、両親とも施設に入ったほうが幸せだと主張していたという。

ここまでは、同居する母親と三女、別居している長女と次女という、家族間での意見の対立だった。だが、その後自体は急展開する。

2017年初め、長女は東京家庭裁判所に、後見開始の審判を申し立てた。そして同2月21日、家裁は母親の晶子さんに後見人をつける審判を出した(審判確定は3月9日)。

問題は、後見開始にあたって、長女も家裁も、母・晶子さん本人の意思を聞いた形跡が見当たらないことだ。

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