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人の寿命はカネ次第…⁉ニッポンの「健康格差」深刻な実態

命にかかわる衝撃の事実が明らかに
NHKスペシャル取材班

国立がん研究センターが都道府県ごとに、がんと診断された人口10万人あたりの患者数(罹患率)をまとめた調査によると、胃がんは男女ともに秋田県が最も高く、肺がんは男性が和歌山県、女性は石川県がワースト1位、乳がんは東京都が突出していることがわかった。一部のがんは、地域によって異なる生活習慣が、がんへのかかりやすさを左右していると考えられている。

バランスがとれた食生活と適度の休息さえとれていれば健康であったはずの人が、ここまでに列挙した理由が原因で健康を損ない短命に終わるとしたら、大きな問題だ。

バブル崩壊後の社会構造の変化が、ついに国民の健康にまで影響を及ぼしてきたという意味で、「健康格差」は日本社会にとって看過することができない深刻な問題になってきた。

放置するほど損

「健康格差」は、人の命の格差に直結していく取り返しのつかない社会問題だ。日本だけではなく、世界的な規模で起きていることから、WHO(世界保健機関)も警鐘を鳴らしている。WHOは「健康格差」を生み出す要因として、所得、地域、雇用形態、家族構成の4つが背景にあると指摘し、「健康格差」を解消するよう各国に対策を求めている。

こうした中、日本の「健康格差」問題に対し、世界を代表する公衆衛生の研究者も「このままにしておくと、日本の長寿大国は危ない」と警告している。そのひとりが、2015年から2016年まで世界医師会会長を務めたマイケル・マーモット氏だ。

マーモット氏はロンドン大学教授で、2000年に疫学と「健康格差」の研究でナイト(knight)の称号を得ている。マーモット氏は、日本の貧困率がOECD(経済協力開発機構)先進35ヵ国中7番目に高いことを指摘し、世界に誇る国民皆保険制度が確立されている日本でも健康格差が拡大していると強く懸念している。

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国も当然、危機感を抱いている。平成26年版厚生労働白書に、「健康日本21」(第2次)の基本的な方向として「健康格差の縮小」を取り組むべき筆頭項目に挙げた。国は「健康格差」を解消できれば、10年間で5兆円の社会保障費を抑制できるとして、対策に乗り出している。

そこで、私たちNHKスペシャル「私たちのこれから」取材班では、「健康格差」の実態と問題の共有、そして、主要な課題点を理解した上で、処方箋となりうる打開策を探るため各方面に取材を行い、今後検討すべき政策提言にまで踏み込んだ。