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米元国防次官補ジョセフ・ナイの警告「金正恩を舐めてはいけない」

米政府の後悔を明かす
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日本の話をしましょう。もし北朝鮮が発射したミサイルが日本に落ちるようなことになれば、アメリカは応酬すると考えます。日米安保条約第5条に基づいて、アメリカは日本を守らなければなりません。何より、日本には在日米軍があります。

日本に有事があれば、多くのアメリカ人にも犠牲が出てしまう以上、米国は報復攻撃を行い、北朝鮮という国家を確実に終わらせるでしょう。それは限定的攻撃ではない。北朝鮮国家の完全な消滅を意味します。

そのリスクを、金正恩は理解しているはずですから、核による自滅的な行動は、アメリカも北朝鮮もとらないでしょう。

金正恩は計算ずくで行動している以上、核戦争ともなれば、それが北朝鮮の崩壊と終焉につながるとわかっているからです。

ただし、自分が殺されると判断すれば、金正恩が先制攻撃をする可能性は捨てきれません。通常の戦争の危険性は常にあり、誤算のリスクも存在します。

1914年、バルカン戦争がその後4年に及ぶ第1次世界大戦に広がることを予測したヨーロッパの首脳は、一人としていなかった。

 

しかし、金正恩を抑えこむことは不可能ではない。彼は自分のレジームの破壊や北朝鮮の崩壊を見たくないからです。

彼がアメリカに対して求めているのは、自己の政権の安全の保証ですが、それだけでなく、より繁栄している韓国を威嚇する能力も求めているのも事実です。だから、彼らは核兵器の保有を続ける。

非常に強力な制裁を科し、北朝鮮を交渉のテーブルにつかせるのも一つの方法です。アメリカが行ったイランとの核合意は強力で、実効性もありましたが、それと同様のやり方が北朝鮮に対して効果があるかどうかは、まったくわかりません。

そして残念ながら、北朝鮮に対する一連の経済制裁は、それほど効果が上がっていません。

習近平Photo by GettyImages

これは、ひとえに、中国にかかっています。彼らがどれだけ真剣に、北朝鮮への食料と燃料の供給をカットするか次第なのです。中国は現在の経済制裁で、なんとかトランプを黙らせているものの、金正恩を止めさせるほどの効果は出ていない。

中国は、アメリカが高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD」を韓国に配置させたことに苛立っています。しかしアメリカにとって、北朝鮮のミサイルが韓国や日本に向けられている以上、それを迎撃する能力を高めるのは当然のことです。

中国がそれを気にくわないと思うのであれば、北朝鮮のミサイル実験を止めさせるべきです。

中国が北朝鮮に対して真剣に向き合わないのは、北朝鮮の暴発を恐れているからです。彼らが心配しているのは、北朝鮮の兵器よりも、政権が崩壊した後に中朝国境がカオス状態になることです。

難民が中国に流れてきますし、北朝鮮国内での異なるグループの内戦が生じ、韓国人やアメリカ人を巻き込むかもしれません。中国は、北朝鮮の非核化をずっと望んでいるものの、彼らの最優先事項はあくまで国境の安定であって、非核化は二の次の話なのです。

そういう意味で、トランプ・習会談は、もっとも重要な意味を持ちます。

8月にトランプが、「世界がこれまで目にしたことのないような炎と怒りに直面することになる」と北朝鮮に関して述べました。米国が軍事作戦を検討していると表明すること自体は、中国に対する圧力になります。

しかし、トランプという人物は非常に気まぐれな性格です。政権幹部の発言を夜中のツイッターで覆してしまうという特異な性格で、政治とコミュニケーションを破壊している。明確な戦略で動くのではなく、取引を重要視する。

トランプは実際4月にアフガニスタンでイスラム国の拠点に大規模な空爆を行い、息子のトランプ・ジュニアは、それを爆弾の絵文字を使ってツイートして賞賛しています。このような振る舞いをする大統領は過去にも例がなく、予測が難しいところがあります。