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週刊現代 アメリカ 北朝鮮

米元国防次官補ジョセフ・ナイの警告「金正恩を舐めてはいけない」

米政府の後悔を明かす

安倍首相との会談を皮切りに始まるトランプ大統領のアジア訪問。この間にも、北朝鮮情勢は予断を許さない状況にある。日米関係と極東情勢に精通する世界的知性が、「北朝鮮動乱」を語り尽くした。

金正恩はなぜ核に固執するか

「金正恩のことを、挑発行動を繰り返すだけの、まるで正気ではない独裁者だという人がいます。しかし、私はそうは思わない。金正恩は自暴自棄になっているわけではなく、計算ずくで行動しているのです」

<こう語るのは、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授(80歳)。世界的な国際政治学者でありながら、アメリカのカーター政権で国務副次官、クリントン政権では国家情報会議(NIC)議長や国防次官補などの要職を歴任した人物だ。

米国の東アジア戦略策定にも携わり、沖縄・普天間飛行場返還の日米合意を主導したことでも知られる。

'00年から3度にわたって共同執筆した『アーミテージ・レポート』は、対日外交の指針として、今も米国の対日戦略の基本文献だ。日本と歴代米政権の仲介者として活躍し、安倍晋三首相とも何度も面会してきた。

この米国の極東戦略の世界的権威が、本誌の独占インタビューに答えた。>

 

北朝鮮が核を放棄する意思を示さないかぎり、対話には応じない――クリントン政権から続いた宥和政策は結局効果がありませんでした。

金正恩はアメリカの圧倒的な軍事力に怯えることもなく、慎重に核兵器開発を続けてきました。これは、決して金正恩の挑発や思いつきではなく、非常に綿密な戦略によるものでした。

'94年10月、私がクリントン政権で国防次官補を務めていた時、アメリカが北朝鮮に核開発を凍結させ、見返りに軽水炉を提供する「米朝枠組み合意」が成立しました。

しかし北朝鮮はそれを無視し、ウラン濃縮による核開発を続行したうえ、'03年には核拡散防止条約(NPT)からの即時脱退を表明します。その後も、国連の制裁にもかかわらず、核実験と長距離弾道ミサイル実験を繰り返しています。

なぜこうなったのか。北朝鮮にとって核開発プログラムは、手にしている唯一の外交カードだからです。この20年間、アメリカは北朝鮮に核を断念させるべく、13.5億ドル(約1540億円)を投じてきましたが、北朝鮮がカードを捨てるはずがないのです。

確かに金正恩は今年9月に「米国のおいぼれを必ず火で罰する」などという暴言を吐いている。だが、彼はすべてを計算して行動しています。

金正恩を舐めてはいけない。十分な軍事力を持てたとの確信を得れば、武力を使って、韓国との「再統一」を宣言する可能性だってあります。

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この状況下、トランプ大統領が来日し、6日に安倍晋三首相と首脳会談を行った後、7日に韓国で文在寅大統領、8日には中国で習近平国家主席とそれぞれ会談します。

いまトランプの頭を悩ませているのは、当然ながら金正恩のことです。

アジア歴訪のなか、最大のポイントになるのは8日の習近平との会談でしょう。北朝鮮が輸入している食料と燃料の大半を供給しているのは中国です。

弾道ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対し、中国を通じて圧力をかけるべく、トランプはさらなる要請を行う。これがどこまで行くかが焦点です。