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「怖い絵」展開催までの悪戦苦闘

「プロジェクトX」ばりの裏話を明かす
中野 京子 プロフィール

ストーリーのいっぱいつまった箱みたい

「企画の勝利」と言われるが、開催を決めた時点では、果たしてどれだけ見に来てもらえるか五里霧中、せめて大失敗だけはしませんようにと関係者は皆、祈る思いだった。何しろ通常の展覧会に比べ、何から何まで異色である。

1つには、美術専門家でもないドイツ文学者による書籍(角川文庫『怖い絵』シリーズ)が元になっていること。

2つ目は、画家や美術館くくりではなく、「恐怖」を、それもさまざまな恐怖を孕んだ西洋絵画が集められていること。

3つ目は、各作品の横にかなり長めの解説を掲げ、また詳しい音声ガイド使用も促して、自分の感性だけを頼りにするのではなく知識を得て絵を見てください、と鑑賞者に(不遜にも)強制していること。

 

どれも従来の美術展では考えられない破格さであり、心配は尽きなかった。果たして理解してもらえるのだろうか、受け入れてもらえるのだろうか……結果的にそれは理解され、受け入れられたと思いたい。

「怖い絵」と聞いただけで際物扱いしていた人も、展示されている芸術性の高い作品の数々を前に、誤解をといてくれたと信じたい。スプラッターやグロテスク趣味だけを求めて見に来た若者の中にも、本物のオーラに触れて名画鑑賞の喜びに目覚める人もいると確信している。これもどなたかのツィートだが、「美術館自体がストーリーのいっぱいつまった箱みたい」(若い人の感性はすばらしい)!

日本人はもともと絵が大好きだし、知識欲も旺盛だ。見て感じなさいというこれまでの美術展にどこか飽き足らなかった人たちが、もともと意味やストーリーのある作品の、その意味やストーリーを知って面白くないわけがない。本展がきっかけとなり、これからの美術展も少し変わってくるといいなあと思っている。

「怖い絵」展
2017年12月17日(日)まで上野の森美術館で開催中
開館時間:11月16日(木)から全日9:00〜20:00に延長決定(会期中無休、入場は閉館の30分前まで)
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