政治政策 メディア・マスコミ 政局

なぜ安倍政権の「公文書隠し」は起きたのか、ゼロから解説する

森友・加計・PKO日報問題の本質
三木 由希子 プロフィール

「合法的に廃棄可能」な文書

行政文書は、前述のとおり密接に関連する文書をまとめてファイルに整理して管理され、ファイル単位で中に含まれる最も長い保存期間の行政文書に合わせて設定される。

ただし、ファイルの作成には条件が付けられており、保存期間を同じくすることが適当なものに限るとしている。

例えば、森友学園問題では、国有地を破格の価格で売却した交渉記録は、保存期間が1年未満で契約締結後に廃棄したが問題ないと財務省は説明している。

国有地売却の契約書は長期保存される文書なので、交渉記録が一緒のファイルにまとめられていれば廃棄できないが、保存期間を同じくすることが適当でないと判断すれば、別ファイルにできる。

交渉記録を一つのファイルにまとめて保存期間を1年未満とすれば、短期で合法的に廃棄が可能にある。

そうすると、1年未満の保存期間とは一体何かが問題になる。

 

行政文書の保存期間の基準は公文書管理法施行令で大枠が定められ、業務区分や行政文書の類型など具体化した統一的な基準を行政文書管理ガイドラインで定め、それを基に各行政機関が規則を定めているが、ここには1年未満という保存期間は出てこない。

何が保存期間1年未満の行政文書かという基準は、今の制度ではないのだ。公文書管理法制定以前にも1年未満という保存期間区分はあったが、「週間、月間予定表」「随時発生し、短期に廃棄するもの」「1年以上の保存を要しないもの」と例示されていたのみだ。

そこで、公文書管理法施行令が歴史文書に該当するものは1年以上の保存期間にしなければならないと定めているので、施行令やガイドライン、規則などで保存期間が明示されない類型の文書で、歴史文書に該当しなければ1年未満でよいと反対解釈されている。財務省はこれをもとに交渉記録を1年未満としていたし、南スーダンPKO日報も同様だ。

なぜこのようなことになるのかといえば、1年未満という保存期間区分は、1年以上のものとは明らかに別扱いにされているからだ。

行政文書ファイルは行政文書ファイル管理簿への登録が義務付けられ、ファイルの存在が公表されるが、1年未満はその必要がない。

また、行政文書の廃棄には総理大臣の同意が必要で、実際には内閣府が管理簿をもとに個別審査を行い、廃棄・移管の記録も残るが、1年未満は廃棄審査をしていない。

1年未満の行政文書は廃棄審査を要しないとの決定を2011年4月1日付で総理大臣が行っており、各課室の判断で随時廃棄できるようになっている。

何でも入り得る状態にあり、管理簿に登録不要、廃棄審査も不要となれば、1年未満という保存期間区分は行政機関にとっては大変使い勝手が良い。

私が理事長を務める情報公開クリアリングハウスで調べたところでは、過去に大蔵省の山一證券簿外債務・経営問題をめぐる打合せ記録等、航空幕僚監部による空中給油・輸送機整備の調査成果、自衛隊のイラク人道復興支援活動中の現地広報資料などが1年未満保存で廃棄済みとして、情報公開請求に対して不存在になっていた。

また、南スーダンPKO日報の不存在を、個人文書だからではなく、対外的には1年未満保存文書で廃棄済みと防衛省は説明し続けた理由も、1年未満は管理簿に登録されず、文書の存在も廃棄したことも管理システムに残らないので、いかようにも説明できてしまうことの表れだ。

1年未満は実態不明のブラックボックス化しており、さすがに政府がガイドラインに1年未満の基準を定めるための検討を行い、11月8日に案が示された。

だが、基準は設けても管理簿の登録を廃棄審査は不要という仕組みは変わらないので、どこまで実態が変わるのかには懐疑的だ。