「清宮は順調に育てば松井秀喜を超えられるような逸材ですからね。ゆくゆくは日本のプロ野球を背負わなければいけない。責任は重大ですが、日ハムなら心配はない」と語るのは野球解説者の江本孟紀氏だ。
「彼が活躍するには、とにかくひたすら試合経験を積ませることが一番の近道ですが、日ハムには中田翔を育てた実績がある。
打率は毎年2割前半から半ばをウロウロしているけれど、栗山監督が伸び伸びやらせたおかげで、コンスタントにホームランを打てる選手になった。
高校3年生時点で見れば、松井より清宮のほうがより柔軟性があります。あのスイングの速さはプロの選手と比べてもトップクラス。加えて彼の場合は、器用さがある。
プロの選手でも無茶振りをして、それを『フルスイングだ』という選手がいますが、似て非なるものです。
清宮は、手首や肩の柔らかさを生かして、無理せずスイングスピードを出している。あれは天性のものです。素質的には、この2~3年の内に三冠王もじゅうぶん狙えると思いますよ」
江本氏が「松井以上」と絶賛する清宮の才能を、12球団で最高の育成力を誇る日ハムが順調に育て上げれば、松井が'02年に残したキャリアハイの3割・50本塁打をクリアすることも決して夢ではない。
さらに、日ハムは今オフ、清宮と同じファーストの中田翔がFA権を取得した。仮に中田がFAで移籍した場合は、一年目から即レギュラーも期待したくなる。
だが、野球評論家の藪恵壹氏は「日ハムは最初は二軍でじっくり育てるのでは」と予想する。
「日ハムは、野手であれば『ファームで300打席は打たせる』とか、明確な基準を持って育成するチームです。与えられた機会の中できっちり結果を残さないと、一軍へは行けない。
ファームである程度、プロ生活の流れがわかって、その中で余裕が出て、彼本来のバッティングができれば、夏ごろには一軍に昇格できるかもしれない」
では、清宮が高卒ルーキーとして3割30本を記録した清原和博並みの活躍を見せるためには、何が必要となるのか。
清宮は2年秋の東京大会決勝で対戦相手の日大三高の左ピッチャーから5打席連続三振を取られて以降、「インコース高めで身体を起こされると、外のスライダーに対応できない」という弱点がよく指摘される。
しかし、前出の藪氏は「プロ入り後に清宮が苦しむのは、むしろインコースだろう」と語る。
「清宮くんの利き目はおそらく左目です。左バッターの場合、左が利き目だと、右投手がインコースにスライダーを投げてくると死角になる。足元にサッと流れてくる球です。同じく利き目が左の松井も、現役時代はそこにフォークを投げるのが打ち取るための『セオリー』になっていた。
ただし、同じ左バッターでも、イチローは利き目が右だったのでインコースを苦にしなかったのです。
清宮くんは、たとえば自分の見やすいほうに顎を向けたり、右足を少し引いてオープン気味に構えて視界を広げるとか、そういう対処法を身につける必要がある」