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「ネット左翼」の暴走で、日本のリベラルが消滅する日

【緊急対談】この国の政治のゆくえ
古谷 経衡, 辻田 真佐憲 プロフィール

自民党がネット右翼に懲りた理由

古谷:自民党は下野していた2010年ごろ、ネット右翼を思い切って取り込もうとしたんですが、結局懲りて今のような距離感になっていると思うんです。J-NSC(自民党ネットサポーターズクラブ。2009年に発足した自民党のネット上での後援会)も民主党政権下で最も盛り上がっていましたが、時が経つにつれ、彼らが面倒臭いわりにあまり票にならないということがわかってきた。

だから、今の自民党はネット右翼層からも支持を得ているわりには、すごく戦後民主主義的なことを言っているわけです。もうネット右翼は、ほとんど無理して「安倍さんがいい」って言っている状況ですよね。だって、彼らが求めていた「竹島問題を国際司法裁判所に提訴しろ」とか「尖閣に自衛隊を常駐させろ」といった要求を、ことごとく安倍総理は無視していて、竹島記念切手すら発行していない。

「やると言うから支持したのに」と怒っている人たちがもう5年前の安倍政権発足当時からいるんですが、「いや、安倍さんは昼行灯を演じているんだ」とか「君側の奸が悪さをしているんだ」とか言って、無理して支持しているんですよ。

辻田:もはや保守というよりは、「安倍政権を応援することが保守だ」というキャンペーンみたいになっていますよね。

古谷:完全にそうです。

 

辻田:陰謀論や歴史問題とも関係する気がしますが、一方で左翼には全てを「戦前回帰だ」というレンズで見る人たちがいるわけです。これは丁寧にやろうとすると難しい議論なんですけど、やっぱり歴史には類似と差異、つまりどんな時代にも必ず似ているところと違っているところがある。

何でもかんでも「戦前回帰を食い止めろ」と叫ぶ人たちに対抗するために、全く異なる別の部分を持ち出して「歴史なんて参考にならないんだ」と主張するような動きさえ一部には出てきている。私はこういう流れは不健全だと思っています。歴史を参考にすること自体は必要ですから。

そもそも近代以降、日本には今のような「落ち目の時代」はなかったわけですね。敗戦のような苦境から這い上がっていく経験はあっても、下り坂を降りていく経験はない。

古谷:全くその通りです。右翼は反対に、何でもかんでも「戦前に回帰せよ」ですから、うんざりなんですよ(笑)。「教育勅語は素晴らしい」とか「昔の日本人は家族を大事にしていました」とか、「そうした伝統がGHQによって壊された」とか。典型的な陰謀論ですね。

右は「戦前美化」、左は「戦前唾棄」ばかり声高に言うものだから、部外者からするともう面倒臭くて、歴史に何らこれ学ぶところなし、という気持ちになってしまう。

古谷経衡氏

今はそんなことを言っている場合ではないし、日本が衰退に向かっているということは誰の目にも明らかなわけです。個人的には、コンドラチェフの波じゃないですけど、衰退国家を無理に浮上させようというのは、自然の摂理に反すると思うんですよ。必然的な歴史の流れというものがあって、かつて栄華を誇ったオランダやスペインが衰えていったように、いくら頑張っても引き返せないことはある。

ただ、歴史の流れと個人の幸福は必ずしも一致しないし、あるいはいったん落日を迎えた国が再び栄えるということも、孫の孫くらいの世代にはあるかもしれない。