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「ネット左翼」の暴走で、日本のリベラルが消滅する日

【緊急対談】この国の政治のゆくえ

10月の総選挙であらわになった、「ネット左翼」という新たなムーブメント。「ネット右翼」が保守言論を破壊したごとく、彼らが今度はリベラル陣営を崩壊に追い込んでしまうのではないかーー。

日本の政治言論を、鋭い観察眼で分析する2人の対談。昨日公開の前編に続き、この国の「進むべき道」まで踏み込んで考察した、必読の後編をお届けする。

「護憲」って、よくわからない

辻田:ところで、そもそも論なんですが、私は「護憲」という立場がよくわからないんですよね。立憲主義、つまり憲法によって権力を縛るんだということであれば、時代が変われば権力のありようも変わるので、「新しい形で縛るために憲法を変える」という考え方は、ナショナリズムや右翼左翼とは関係なく自然なことだと思うんです。

「現行憲法を一言一句絶対死守する」という立場は、戦争の記憶が生々しかった時代はともかく、現代においてはおそらく敗れざるを得ないというか、そこで戦線を張っても滅ぶしかないでしょう。

古谷:その通りだと思います。

辻田:ですから立憲民主党は自民党の憲法改正を止めたいなら、「絶対反対」というよりは「自民党よりマシな案を作ろう」という議論に持って行った方が、よほど現実的だと思うんです。

古谷:ゆくゆくは、そうなっていくでしょうね。

辻田:一方で、そうすると「憲法改正絶対反対」という左翼陣営のコア支持層をつなぎ止められなくなって、党勢を維持できなくなるかもしれない。今回、希望の党は「もう一つの保守政党」という触れ込みで出てきたわけですが、こちらがカムバックしてきて、政権を担いうる政党になる可能性もあるのかなと思うんですけどね。

古谷:希望の党の今後は、これはもう何とも言えませんね。少なくとも今の時点では、次回の参院選で希望の党から出たい議員なんてまずいない。そうすると、衆院で50議席持っているだけという非常にいびつな、影響力のない党になってしまう。

辻田:そうは言っても、左右を問わず、「自民党に対抗できる政党が必要だ」という意識は国民にまだ残っていると思うんです。リベラルが消えていくとなると、保守系の党が求められるようになってくる。小池さんが捲土重来を果たす余地はあるような気がするんですよ。

古谷:私は辻田さんと少し意見が違って、保守はもう今の自民党だけで十分と思っているので。むしろ、自民党がネット右翼のような存在に足元をすくわれることを危惧しています。「非自民の保守政党」なんてもういらない。自民党の中に派閥として石破派とか岸田派のような、いわゆる保守本流の流れがあって、自民党内に選択肢があるということでいいじゃないか、と。

辻田:でも、自民党に緊張感を持たせる政党は必要じゃないでしょうか。

 

古谷:本来、それは公明党の役割なんだと思うんです。自民党内でハト派と言われる派閥が縮小しているのは事実なので、その補完勢力になりうるのが公明党のはずだけど、難しいところですね。あとは参議院がブレーキになれば。参院選で自民党が圧勝することはおそらく不可能ですし。

もう一つ指摘しておきたいのは、「自民党以外の保守政党を作る」という試みって、ことごとくうまくいっていないんです。みんなの党も維新の会もろくなことにならなかった。維新は地域政党としてはよかったかもしれませんが、国政に出て橋下徹さんが離れたら大混乱になった。

「非自民党の保守」は、表面的には面白いことを言うし、改革を掲げるから有権者には一時的に受けるんですが、結局は自民党に入れないだけの議員の受け皿になってしまうんですよね。

維新の会から旧太陽の党が生まれ、次世代の党に変わり、それが基礎となってネット右翼が台頭した部分もあるわけです。維新が存在しなかったら議員になっていないはずのトンデモ議員も少なくない。仮に田母神(俊雄・元航空幕僚長)さんが世に出なかったとしたら、保守論壇も現在のようないびつな形にはならなかったんじゃないかと思うんです。その功罪は考慮しないといけない。

「似てるけど少し違う奴」を攻撃する

辻田:なるほど。今回の選挙で、希望の党と立憲民主党が生まれたことによって、政界の構造がかなり変わったと思うのですが、これまで右翼は民主党・民進党を、左翼は自民党を叩くことをよりどころにしてきた面があります。これから、とりあえずネット右翼は左翼全般、立憲民主党、共産党に対する批判を強めていくんでしょうか。

古谷:そうとも限らないのではないかと思います。ネット右翼をずっとウォッチしていると、実は彼らは必ずしも民主党・民進党だけを叩いているわけではなくて、自民党内のハト派も叩くんですよ。河野洋平さんもそうだし、野中広務さんとかもそう。

じゃあ、ネット右翼の拠り所って結局何なのかというと、清和会なんです。これは現代ビジネスで連載している「ネット右翼十五年史」で前半の核心になってくる部分なんですけど、彼らは要するに清和会の別動隊というか、青嵐会のネット版みたいなものなんですよ。自民党の保守本流に対するアンチ、宏池会に対するアンチで、有り体に言えばタカ派。とにかくタカ派。