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人口・少子高齢化 ライフ

「育休を取ると出世できない」は本当か?学者が検証

イクメンになったことで得した人もいる

育休取るならキャリアは諦める――。男性にとって育児休暇とは、それほど非現実的なものとして捉えられてきた。ただ、近年は育休を取ることがプラスに働き、キャリアアップをしているケースがいくつも見られる。仕事を休むことと出世は矛盾するように思えるが、実はそうでもない。

男性の育児環境で何が起きているのか。現代の育児環境を徹底取材した『ワンオペ育児』を上梓した気鋭の社会学者・藤田結子氏が解説する。

パタハラの恐怖

育児休業を取得したいと希望する男性の割合は意外と高い。約7割が希望という東京都の調査結果もある。それなのに、なぜ男たちは育休を取得しないのか。2016年度の男性の育休取得率はたった3%である。

その理由として必ずあがるのが「職場の雰囲気」だ。そもそも育休の権利行使に対する嫌がらせは法律違反なのだが、パタハラ(=パタニティ・ハラスメント、育児参加しようとする父親に対する嫌がらせ)の経験談は繰り返し報道されている。

たとえば、東京都内の大手電機メーカーに勤める男性(30代)は育休を2週間取得した後、「社に刃向かった結果なんだから文句はないよな」と上司に言われ、東北地方の子会社に飛ばされた(「イクメン目指せぬ職場環境」『毎日新聞』2017年6月26日)。

都内のエンターテインメント会社に勤めていた男性(40代)は、育休から復帰して職場に行くと、「席はここね。またやること決まったら言うから」と部長職から雑用係に降格された(「部長職、育休とったら干された 転勤迫られ…退職」『朝日新聞』2017年1月15日)。

こういった背筋が凍る話を聞くと、男性の育休はキャリアの上でデメリットしかないように思われる。しかし現実には、育休がキャリアに役立つ場合もあるのだ。思い切って取得したことが、よい結果につながったケースを紹介しよう。

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育休のおかげでキャリアアップ

都内の会社で働く鈴木大輔さん(30代、仮名以下すべて同)の場合、第1子が生まれたときに1ヵ月間育休を取得した。

妻は専業主婦だが、せっかく父親になったのだから育児をしてみたいと思った。職場で育休を取得する男性は鈴木さんがはじめて。上司や同僚の反応が不安だったが、予想していたよりも好意的に受け止められた。

育休中は、毎日家事をこなし、そのうえ息子のおむつを替えたり、お風呂にいれたりして過ごした。

復帰後は、育休取得経験を活かしたいと考え、職場でワークライフバランスやダイバーシティに関するプロジェクトに積極的に関わった。すると、社内・社外で人脈が広がった。

 

しだいに鈴木さんの活動が社内外で評判となって、ついには有名シンクタンクに転職することになった。第2子が生まれたときも育休を取得した。今では、各地での講演や自治体の仕事、職場でのさまざまなプロジェクトに参加し、多忙な日々を過ごしている。

鈴木さんは、「イクメン」を武器にしてセルフブランディングに成功した。会社の一社員から自分の名前で仕事がくるプロフェッショナルへとキャリアアップを遂げたのだ。

ちなみに、母親であれば育児をして当たり前といわれるのに、男は少し育児をしたり育休を取ったりするだけで特別扱いされるなんて不公平だ、という女性の声をよく聞く。その気持ちもよくわかる。

だが、男性の育休取得が増えれば、(今は間に合わなくともせめて自分の娘の時代には)女性の負担も減るのだから、大目に見るほうが女性にとっても得策だろう。

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