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「いつまでもサブカルに生きたい」吉田豪、思い出の10冊

嗚呼、懐かしのラインナップ

「軽い」人間でありたい

今回、改めて10冊を選んでみると、思春期に影響を受けた本が中心になりましたね。

僕は子供の頃からアニメ好きで、アニメがらみの本ばかり読んでいたんですが、思春期に突然パンクに目覚めたんです。パンクの特集をよく組んでいた宝島社の雑誌や本を読むようになり、なかでも、『宝島』に掲載されていた景山民夫さんのコラムが好きでした。

当時、放送作家として活躍していた景山さんは、テレビの中の人として業界に毒を吐きまくるわけですが、その毒っ気と軽さの絶妙なバランスにものすごく惹かれました。『極楽TV』は、そんな景山さんの良さが詰まっているエッセイなんです。

ただその後、景山さんは幸福の科学に入信し、さらに50歳という若さで亡くなってしまう。僕は面識もないのに、お葬式に行きました。晩年の景山さんを見ていると、個人的には“サブカルの敗北”と感じてしまうところがあります。小説を書いて先生と呼ばれるようになり、宗教に入り、人が変わったようになってしまった。

 

『宝島』でハチャメチャをしていた景山さんが大好きだったからこそ、僕自身はいつまでもサブカルに生きよう、いい歳になってもいい意味で「軽い」人間でありたいと思っています。

宝島社から受けた影響でもう一つ大きいのは、町山智浩さんの仕事です。現在は主に映画評論家として活躍されている町山さんは、'80~'90年代、宝島社(当時はJICC出版局)の編集者でした。僕が好きで読んでいたコーナーや雑誌の多くが、町山さんの仕事だったことを、後年、町山さんと面識を持つようになってから知りました。

僕は人間・町山智浩が大好き。スイッチが入ったときの凹みつきっぷりも、瞬間的に凹んだりする反応も、超人間らしいなと思う(笑)。『別冊宝島』の『おたくの本』もそんな町山さんの仕事です。宮崎勤事件の年に出てバカ売れしたんですが、僕自身もアニオタだったので、「おたく」は他人事ではなかったんですね。

藤子・F・不二雄の晩年の苦悩

宮崎勤事件はある時期まで、関連本はすべて読んでいました。その中で、事件の記録としていちばん優れているのが『贖罪のアナグラム』です。当時のマスコミ報道の暴走っぷりも記録されています。最も強烈だったのは「母乳で育てないと宮崎になる」という雑誌の見出しでしたね。

高校卒業後に専門学校を出て、編集プロダクションで働き始めた僕の人生を変えた一冊が、『猪木とは何か?』です。

これは猪木が収賄や女性問題などでいわゆる「猪木スキャンダル」の渦中にいた時に、ダメなところも含めて彼を面白がろうというスタンスで作られた本です。そういう見方があったのかと、まず教えられました。それから、インタビューのまとめ方という点でも影響を受けました。

例えば、相手が怒り出す瞬間をそのまま載せるんです。「ドーンとテーブルを叩く」みたいな描写が補足してあって、取材時の緊張感が伝わってくる。さらに、この本の書評を書いたことがきっかけで僕はプロレス雑誌に呼ばれ、気づいたら『紙のプロレス』編集部の人間になっていたのです。

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