〔PHOTO〕gettyimages
政治政策 中国

習近平が「中国建国の父」に肩を並べた日

共産党大会で発表された「習憲法」の全て

「習近平憲法」の制定

10月24日に閉幕した第19回中国共産党大会は、「党の偉大なる勝利のうちに閉幕した」と喧伝しているが、実際には、「習近平総書記の勝利」のうちに閉幕した。

それは、その後の中国メディアの報道ぶりを見ていると分かる。例えば、朝7時から8時までの中国中央テレビ(CCTV)のニュースでは、いまや番組の半分以上の時間を使って、「特殊なインタビュー」を放映している。

それは、偉大な習近平総書記のおかげで、どれだけ自分たちの生活が向上し、日々夢を持って生きているかということを、全国北から南までの多種多様な人々が、マイクに向かって語るといったものだ。まさに時代は急速に、毛沢東の個人崇拝時代へと逆戻りしているのである。

〔PHOTO〕gettyimages

今回の共産党大会で何が行われたかと言えば、それは、党規約の改正、王岐山書記の引退、後継者の指名なし、という3点に集約される。今週は、党規約の改正問題について、詳細に見ていきたい。

党規約(党章程)は、「中国共産党の憲法」とも言うべき最高規定で、全文は55条からなっている。字数にして約1万5000字である。8900万中国共産党員が遵守すべき規約であると同時に、「共産党が指導する」14億中国国民にも、ある意味、中華人民共和国憲法以上に影響を与えるものだ。

党規約は、1922年に上海の成都北路にある家屋(現在は記念館になっている)で行われた第2回共産党大会で制定された。それ以降、今回が17回目の改定で、全53条が55条に増え、改定箇所は107ヵ所に及んだ。従来に較べて、かなり大幅な改定と言ってよい。

全文を読むと分かるが、細部にわたって習近平総書記の考えが埋め込まれたのが、今回の改定の特徴である。

日本で言うなら、憲法を改正し、自民党が2012年に作った憲法改正草案に変えるようなものである。ほぼ全面的な見直しで、従来のものを換骨奪胎させた「習近平党規約」と言える。

そのうち、今回新たに党規約に明記された特徴的な「8つの文言」は、以下の通りである。

 

①「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」

いまや中国は、「習近平新時代」を迎えたのだという。日本のメディアでも大きく取り上げられた文言だが、この言葉を新たな党規約で確認してみると、前文と第3条に入っていた。

前文では5行目に、「中国共産党は、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、“3つの代表”の重要思想、科学的発展観、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を、自己の行動指南とする」とある他、計4ヵ所に入っている。

また第3条では、「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、“3つの代表”の重要思想、科学的発展観、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を熱心に学習し、党の路線・方針・政策・決議を学習し、党の基本知識を学習し、科学・文化・法律・業務知識を学習し、人民に奉仕する本領を向上させるよう努力する」とある。

毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤、習近平と続く歴代5人の「皇帝」の教えを並べてみると分かるが、江沢民元総書記は「“3つの代表”の重要思想」、胡錦濤前総書記は「科学的発展観」ということで、それぞれ自分の名前を冠していない。

これは、この両指導者の権威がそれほど高くなかったからとも言えるが、それよりも両指導者が、毛沢東と鄧小平に遠慮した結果ではないかと思う。江蘇省南部出身者の謙譲深い性格がそうさせたのだろう。

それに対して習近平総書記は、誰はばかることもなく、自分の名前を冠した長ったらしい16文字を書き加えた。特に、「理論」でなく「思想」としたところからも、「自分は建国の父(毛沢東)に並ぶ権威を持っている」と誇示する狙いがあるのは明白だ。