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実は少なくない人が経験している「無職期間」を考察してみた

愉楽と不安が交互にやってきて…

働いていたとき辛く、働いていなくても辛い

アラフォー/仕事/働き方/無職/独身/非正規——ある書評サイトで拙著『あたらしい無職』が紹介されたときの関連ワードだ。雇い止めとなり求職活動をして就職したが、およそ1年で会社を辞め現在に至る日常を書いた。“すべてのゆかいな仕事人に捧ぐリトルマガジン”とうたう「仕事文脈」に掲載した記事と書き下ろしを収めていて、自己啓発でもなく、ノウハウでもなく、エンタメでもない。

本書について、ライターの武田砂鉄さんは「淡々と、でも必死にわたしは生きている」というタイトルで評してくれた。「フリーで物書きをやっていると、愉楽と不安が交互にやってくる。満員電車と逆方向の電車に乗れる楽しさは、もう満員電車の一員にはなれない不安と表裏一体」という一文に、そうなんですよねえ、とわたしはひとり相づちをうったが、この本で書いたことが「業界あるある」なのかすらフリー仲間を持たないわたしにはよくわからなかったし、非正規雇用で出版業界を渡り歩いたこの日常が、職種を超えてどう届くのかはもっとわからなかった。

 

ところが、刊行からおよそ3ヵ月のうちに寄せられた感想には、自分の予想を超えた「共感」があった。

共感の場所は人それぞれ違った。

「ハローワークの描写とか、そうそうって思いました」(30代女性)

「社会保険料の支払い、わたしも苦しくて。生活できないって思いながら払ってました」(30代女性)

「『自分の時間をドブに捨てないことにした。無理をしない』は、とくにグサッときました」(40代男性)

「再就職したあとの様々なエピソードがリアルでした(昼、外で食べないと気分転換にならない……など)」(40代女性)

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愛読者カードを寄せてくださった方のなかには、退職して有り金はたいて出た旅先で本書に出会ったという人もいた。

「人間は不思議ですね。働いていたときも辛く、働いていなくても辛い」(40代女性)

「無職」の期間を少なくない人たちが経験している。でもそれが語られることは多くない。

刊行記念のトークイベント後、声をかけてくださる方々がいた。直接感想が聞けただけでなく、自分の体験を話してくれたことに感激したが、共感の向こうには人それぞれのわだかまりがいまも横たわっているのか、ほとんどの方が話しているうち考えごとをしている顔になっていった。

小さな読書会に足を運んでくれた、来年卒業予定だという男子大学生は、「働くことのリアリティっていうか、能力差があってうまくいかない感じが、部活動を思い出す」と言った。入社前に多くの情報が得られる現在、就職活動をしつつ、「ホワイト企業がいいけどブラックでも割り切ってしまおうかとぐだぐだ考えてしまう」

59歳の男性は、退職の話が出ていたタイミングでこの本の存在を知り読んでくれたそうだ。男性はすっきりとした表情で「退職を決めました」と言った。人生を見直したいという時期に、手に取ってくれている。「タイトルがいいですよね。あたらしい、ってね」。にこにこと男性は言った。もし、このタイトルが無職にまとわりつく負い目を少しでもなくしたり、塗り替えたのならうれしいと思った。