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「おばあちゃん格差」でキャリアを諦めた上京組元バリキャリ専業主婦

A子ちゃんとB美ちゃんの複雑な感情⑩

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第5試合「出身地」対決のBサイド。

今回のヒロインは、新潟出身の元バリキャリ、現在は3児のママ(専業主婦)。夫も地方出身ということもあり、近くに親がいない状態で育児に奔走する彼女の言い分は?

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多忙ながらも充実した新入社員時代

新潟というのは考えてみると結構微妙な距離で、確かに北海道とか鹿児島とかに比べれば「あ、じゃあそんなに遠いわけじゃないね」と言われるのがわからないでもないが、では北海道や鹿児島に比べて有利なことが何かあるか、というと、今の彼女にはほとんど思いつかない。

「確かに、実家帰るときの交通費は、博多出身の友達よりは安い。でもお金ない時代は親がそれくらいはだしてくれたし、本当にそれくらい。いっそ沖ノ鳥島にでも実家があれば、もう少しは同情してもらえるんだろうかね」

新潟県内から慶應大に入って、授業もゼミもサークルもそこそこ真面目にそこそこ不真面目に、要するにごく一般的な大学生活を楽しみ、短期の語学留学までして、2年生の時までは近所のアジアンカフェで、2年の途中からはアパレルショップでバイトして、その間、時々キャバクラの体験入店荒らしのようなこともした。

都内のそこそこ広い一人暮らしの部屋は、未だ実家暮らしや寮生活の子も多い中で、終電を逃した友人たちが泊まることも多かったし、ホームパーティというほど立派なものでなくとも家飲み会場として人気の溜まり場となった。

高校時代の友人とも疎遠になってしまったわけではなかった。県内屈指の進学校の友人たちは結構都内の大学に通っていたし、一番の親友は同じ区内にやはり一人暮らしをしていた。地元に帰れば家から自転車で行ける距離に中学で仲の良かった友人もいて、「東京の友達とは別の意味で良い世界」が広がっていた。

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就職したのは割引券付きの雑誌や就職情報誌などを発行する大手企業で、若手社員の忙しさや過酷な営業研修などが噂されるような会社だったが、入ってみればそれなりに自分の時間も持てたし、何より、かなりお給料が良かった。

 

多忙であることはそれなりにいいことだ。ブラック企業で疲弊するか、多忙ながらも充実した仕事人として活躍するかは、大いに給料の額によって決まる。残業代なども含めれば、週に何回かリラクゼーションサロンでマッサージや岩盤浴に行き、疲れた時はタクシーで通勤しても差し支えのない収入だった。

「スパのマッサージにはまっちゃって、一時期毎日うちの雑誌とかサイトで新しいところ探しては予約して、しかも120分とか、そのせいで帰宅は遅いは金欠になるわだったけど、まぁ贅沢な話だよね。

でも新入社員は地獄見るよーとか、営業成果ないと一生社に帰れないらしいよーとか、内定してた時は色んな人に脅されたし、学生時代は超夜型だったから社会人を全うできるかって不安だったけど、意外とちょろい。ちょろいって言ったらあれだけど、それなりに楽しかった」