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この選挙で、ネット右翼は終わり新たに「ネット左翼」が生まれた

【緊急対談】不毛な左右対立は加速する
古谷 経衡, 辻田 真佐憲 プロフィール

ネット右翼の「リアル化」

辻田:ネット上で活動している、政治ブロガーや政治系YouTuberの動向は今回はどうでしたか? 古谷さんは常にウォッチなさっていると思いますが。

古谷:低調でしたね。特に次世代の党(注・同年7月に日本維新の会から分党した保守政党。初代党首は平沼赳夫氏。現・日本のこころ)ができて、田母神俊雄(元航空幕僚長)さんが出馬した前回2014年の総選挙の時に比べると。

実は2015年にYouTubeの規約が変わって、韓国・朝鮮関連の差別的な内容を含む動画は広告課金の対象外になったんです。動画による収益が上がらなくなって、一時期に比べると右翼系YouTuberはかなり減っています。

あとは皮肉なことに、そういったブロガーたちが「プチ言論人」化してしまって、あまりネット上で活動しなくなったんですよ。ネット右翼を相手に商売できるようになってしまったから、そういう人たちはみんなリアルのセミナーを始めて、読者を囲い込んでいるんです。

古谷経衡/1982年生まれ。文筆家。保守派論客として各紙誌に寄稿する他、コメンテーターも務める。現代ビジネスにて「ネット右翼十五年史」を連載中。2012年に竹島上陸。著書に『意識高い系の研究』(文藝春秋)、『草食系のための対米自立論』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)他多数。

辻田:有名どころだと、私なんかはKAZUYAさん(注・京本和也氏。1988年生まれの人気政治系YouTuber)を思い出すんですが、彼は今年4月に明治神宮会館で催された「昭和の日をお祝いする集い」にも出ていますし、YouTuberの中ではかなり有名になりましたよね。

古谷:彼はそれこそ明治神宮とか日本会議といった伝統的な保守・右翼組織から認知され始めていて、イベント出演も増えています。ただ、人気自体は頭打ちになっている。ネット右翼という形態そのものが変化し始めているのかもしれなくて、ネットよりもリアルのイベントを軸にする人が増えているんですよ。

辻田:セミナー・講演会ビジネスは儲かりますからね。しかし、そうなると内へこもっていくので、選挙の時には発信力が失われる。

古谷:そうですね。今回Twitterでよく見た「#枝野立て」みたいな特徴的なフレーズは右側にはありませんでした。

 

辻田:むしろ立憲民主党がそういうネット上の盛り上がりを主導していたようにも思います。かつ結果的には、立憲のほうが希望の党より伸びた。この点はどう思われますか。

古谷:立憲民主党のTwitterアカウントのフォロワーが多かったというのは報じられていましたけど、ではそれが選挙結果に何か影響したかというと、それほどしなかったんじゃないかと思います。

面白いことに、立憲民主党は2014年総選挙のときの次世代の党と似たような状況なんですよね。

当時、次世代の党から出馬した田母神さんのTwitterのフォロワーが約20万人。現在の立憲民主党公式アカウントのフォロワーが約19万人で、同じくらいになっている。

次世代の党も立憲民主党も、「Twitterで初めてこの党を知って投票しました」という人はほとんどいないでしょう。要するに、もともとの支持者に一部のネットユーザーが乗っかったということですから、今後リベラルの中では「立憲民主が躍進する」なんていう期待も出てくるかもしれませんけど、あまり根拠がないかなと思いますね。

議席欲しさに希望の党へ行った議員に比べたら、枝野(幸男・立憲民主党代表)さんや長妻(昭・同代表代行)さんのほうがよく見えるというだけ。だから、あらゆる選挙がそうだと思いますが、あまりネットの言説は大勢に影響しないのかなと。