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この選挙で、ネット右翼は終わり新たに「ネット左翼」が生まれた

【緊急対談】不毛な左右対立は加速する

自民党・公明党の与党勢力が、憲法改正発議に必要な「全議席数の3分の2」を上回る、計313議席を獲得した先の総選挙。野党に目を向けると、小池百合子都知事率いる希望の党が大失速し、立憲民主党が野党第一党に躍り出る番狂わせも起きた。

この結果を、一方では「自民党の圧勝」とみる人がいて、また一方では「立憲民主党の躍進」とみる人がいる。なぜこの国の「保守」と「リベラル」はここまで乖離し、互いを激しく罵り合うようになってしまったのか?

難問に立ち向かうのは、現代日本の政治言論・ネット言論に鋭いアンテナを張り続ける2人の若手論客だ。オールドメディアでは絶対に読めない、ディープな分析を語り尽くす緊急対談!

「与党の勝利=戦争」という世界観

古谷:衆議院解散が決まった時点で、私は議席については「自民党が270±10議席」と予想していました。結果は284議席で、ほぼ予想通り。

週刊誌は各誌「希望の党が大躍進で100議席、自民は単独210議席」というような予測を出していたわけですが、私は「いわゆる『劇場型政治』は、少なくとも国政レベルではもう通用しないのではないか」という仮説を立てていたんです。小泉(純一郎)総理の2005年の「郵政選挙」から、もう12年ですからね。

結果を見ると、やはり「テレビにたくさん出れば、大都市の無党派層に風が吹く」という図式はもはや崩壊している。むしろ希望の党はテレビに出すぎたがゆえに、若狭勝さんが「(希望の党が政権奪取をめざすのは)次の次の選挙」と口走ってしまったり、小池百合子代表の「排除」発言が大々的に取り上げられたりしてしまった。

 

さらに今、テレビ局はBPO(放送倫理・番組向上機構)への視聴者のクレームを気にして、非常に慎重になっています。

これまでは、いわゆる「ネット右翼」がTBSやテレビ朝日に「偏向報道は許さないぞ」といちいちクレームをつけてきたんですが、ここ最近はNHKや東京MXに対して、いわゆる革新勢力・リベラル派とされる人たちが「偏向報道だ」と抗議に行くようになっている。

そうした状況の中で、小池さんや希望の党ののいいところも、おかしいところもある程度バランスをとって報道されるようになった。地方首長選では「劇場型」もまだ通用するかもしれませんが、少なくとも国政では、テレビ偏重、イメージ先行の選挙は終わったのではないかと思います。

辻田:今回、希望の党はああいった形で途中で失速し、最終的には立憲民主党が善戦しましたが、もっと引いて全体を眺めてみると、やる前から「自民党の大勝」という結果が見えていた選挙でした。

でも選挙期間中、私がネット上でこういった意見を書くと、リベラル派と思われる人から「これは安倍政権にNOを突きつける戦いなんだ!『戦う前から負けている』なんて言って、水を差すな!」というような批判が少なからず寄せられたんですね。それを見て、なんだか太平洋戦争末期の日本軍みたいだな、と。

客観的に見れば、野党にとっては依然として厳しい戦いだった。ところが、そういうことを指摘するのは敗北主義、シニシズム(冷笑主義)だ、という反応が少なくなくて、リベラルにとっての選挙戦というのは「ハルマゲドン(最終戦争)」みたいになっているなと。

「ここで負けると戦争になるんだ」「独裁政権が生まれて、日本は終わってしまうんだ」というようなことをずっと言い続けている。そのせいで無党派層から冷ややかな視線を浴びてきたわけですが、また今回も同じことをやってしまった。

古谷東浩紀さんの「積極的棄権」の主張なんかは、なぜ東さんと同じ側にいるはずのリベラル陣営からあれほど攻撃されたのか、私にはよくわかりませんでした。

辻田:ネット右翼だけでなくリベラルの側も、もはや意見の内容なんて関係なく、見出しやキャッチフレーズに脊髄反射して批判するという状況になっていると思うんですよね。

私も「こんな酷い選挙で消耗してはならない」という記事を津田大介さん主宰のウェブメディア「ポリタス」に寄稿したところ、最初はあまり反響がなかったんですけど、あるリベラル系のツイッタラーが「この記事はとんでもない」と取り上げた途端に、一斉に批判が来ました。影響力のある人が「これは敵だ」と指し示すと、ワッと群がる。行動様式が、ネット右翼と非常に似てきている。

古谷:それはその通りですね。

一方で、ネットだけでなく世の中全体を見てみると、有権者の目と舌と耳が肥えてきたなとも思います。こんなに強い台風が来たにもかかわらず、3人に1人が期日前投票に行ったというのは、すごいことですよ。全体の投票率は前回より少し上がっただけとはいえ、日本人の政治意識が「意識高い系」ではなくて、本当に高くなってきたんだなと。だから小池さんが狙ったような「劇場型政治」が通用しなくなっている。