サッカー

ハリルホジッチも脱帽した長谷部誠の「キャプテン力」ここがスゴイ

目配りと気配り、そして誇り

今のサッカー日本代表に

もし外せない選手を一人だけ挙げるとしたら――。

あくまで個人的な見解だが、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチなら、キャプテンの長谷部誠を挙げるのではないだろうか。

というのも、指揮官は常々「このチームにスターはいない。スターはチームだ」と語ってきた。誰かを中心に置くチームづくりをやってきたわけではない。本田圭佑や香川真司もコンディションが上がっていないと判断したら迷わずベンチに置き、若い選手をいきなり先発に抜擢したことも一度や二度ではない。

どんなメンバー構成になろうとも、自分の考えをチームに浸透させるうえでチームを束ねる長谷部の力を必要としてきた。スターを置かない代わりにリーダーを据える。長谷部に対する指揮官の信頼は絶大だと言っていい。

「長谷部は我々のキャプテンでチームに安定を持たさなければならない選手。実に経験豊富で、みんなにいろいろな影響を与えている。彼を通すことでチームの団結が始まる。長谷部と補完関係になる選手を見つけなければならないのが我々の課題だ。長谷部はどちらかと言うと守備を安定させる役割を担ってくれる」

長谷部の相棒を探していると言っているようなもの。ハリルホジッチがこのようにレギュラー確約に近い発言をしているのは、長谷部くらいだ。

 

ロシアワールドカップ出場を決めた8月31日のオーストラリア戦。長谷部は4-3-3のアンカーに入ってチームをコントロールした。アンカー横のスペースを相手に狙われると、インサイドハーフの井出口陽介、山口蛍の2人にカバーさせながら対処。指示とスペースを埋める自身の絶妙なポジショニングで「守備を安定させる役割」を実践したのだった。指揮官の戦術にプラスして臨機応変を加えていたのが、他ならぬ長谷部であった。

「本当にこんなに名ばかりのキャプテンはいないなと僕自身感じています。経験のある選手がチームを支えてくれて、本当にチームワークがありました」

これはベスト16に躍進した2010年の南アフリカW杯を終え、帰国会見に臨んだときの長谷部の言葉である。大会直前になってゲームキャプテンに抜擢され、その期待に応えながらも自分のことをキャプテンとして認識していなかった。

自称「名ばかりのキャプテン」はその後、「名キャプテン」になっていく。

若手の話を聞く、裏方をねぎらう

アルベルト・ザッケローニのもとでチームキャプテンを務め、そのリーダーシップは次第に注目されるようになる。

2011年1月のアジアカップは、まさに長谷部の力なくして優勝はなかった。初戦のヨルダン戦に引き分けると選手ミーティングを開き、「みんな厳しさが足りないんじゃないか。日本代表の誇りを持って戦おう」と呼び掛けた。若い選手には「お客さん感覚でやっている」と意識改革を求めた。

2戦目のシリア戦では相手と接触した川島永嗣が一発レッドで退場。シリアのオフサイドを主張して主審に詰め寄るとチームメイトを引き離して、長谷部は手を後ろに組んで抗議している。熱くなったチームを落ち着かせ、勝利へと導いている。そこからチームは勢いに乗り、ビクトリーロードを駆け上がっていった。

目配りと気配りのキャプテン。

食事になれば、いつも違ったテーブルに顔を出し、声を掛けていたそうだ。若手の話にも耳を傾ける。練習でチームに疲労が溜まっていると感じれば、意見をまとめて練習メニューの軽減をザッケローニに願い出ていた。

裏方への配慮も忘れない。南アフリカW杯では大会後、メディカルスタッフや西芳照代表専属シェフを始めスタッフ一人ひとりに、全選手のサイン、メッセージを入れた大会ユニホームを手渡している。その音頭を取ったのが長谷部であり、誰のユニホームをどのスタッフに手渡すのかということまで、選手各々が世話になった頻度を踏まえながら考えていたという。

そんな評判を聞いていたザッケローニは、就任当初から長谷部のキャプテン就任を決めていた。振る舞いにリーダーの資質を見ていたからだ。

長谷部のキャプテンシーについて、ザッケローニに直接、尋ねたことがある。彼はこう語った。

絶大な信頼

「長谷部が一度、私のところに『キャプテンは誰ですか?』って聞きに来たんだよ。多分、引き続きキャプテンをやらされるんじゃないかって不安だったのかもしれない。でも私は言ったんだ。『もし前のチームで君がキャプテンじゃなかったとしても、私は君にキャプテンをやってもらうつもりでいる』とね。

実際、素晴らしいキャプテンだと思っている。長谷部は選手のことをよく理解していて、己の役割というものを完璧に把握している。彼に何か注文を出すということはない。長谷部はマルディーニなんだよ。いや、彼と比べたって見劣りしないと言ってもいい。個人的に、最高のキャプテンだと思っている」

イタリアが誇る偉大なキャプテン、パオロ・マルディーニを引き合いに出し、最高の賛辞を送っている。指揮官は常に長谷部とコミュニケーションを取ることで、チームづくりを進めていった。

長谷部はハリルホジッチに対しても選手の総意としてミーティングの回数を減らすよう、または時間を短くするように要望を出すなど、コミュニケーションを多く取っている。これからチームづくりを仕上げていくうえで、キャプテンの役割はもっと大きくなっていくに違いない。

ハビエル・アギーレを含め、歴代の監督から絶大な信頼を置かれてきた彼には何より日本代表としての誇りがある。

もう9年前になるだろうか。岡田ジャパンでレギュラーを張るようになり、キャップ数もまだ「10台」だったころにドイツでインタビューをした。代表に対する“熱い言葉”が実に印象的だった。

「僕たちが小さいころ、代表のカズ(三浦知良)さん、ラモス(瑠偉)さん、柱谷(哲二)さんたちをテレビで観て、闘っているなって伝わってきました。今は観ている人がそういったものを感じ取れない人もいるというような話も聞きます。闘う気持ちを感じてくれるぐらいの熱いプレーをしないといけない。それを前面に押し出してやるような。試合はやっぱり熱くなるところが必要になってくると思うので」

長谷部誠は昔も今も変わらない。

日本代表に対する誇りが、キャプテンシーの源流にあるような気がしてならない。
 

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