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沖縄「チビチリガマ荒らし事件」とは何だったのか?

建築業の現在から見えてくること

チビチリガマで起こったこと

9月、沖縄県読谷村のチビチリガマが少年らによって荒らされるという衝撃的な事件が起きた。器物損壊の容疑で逮捕されたのは4名で、沖縄県中部在住の16歳、18歳の無職の少年と、17歳の型枠解体工の少年、そして19歳の高校生(休学中)だった。

少年らがガマに侵入した動機は、「肝試し」と発表された。千羽鶴は引きちぎられ、骨壺は破壊され、「平和」と書かれた額は叩き壊された。「肝試し」に加わった、他のメンバーからは、「やるな、やるな」と制止する場面もあったという。

チビチリガマは、沖縄戦の戦跡のひとつである。沖縄戦は、地上戦が展開され、兵士だけでなく一般住民の多くが被害にあった。

チビチリガマでは、83名(新城俊昭著『琉球・沖縄史』より)の一般住民が「集団自決」(強制集団死)に追い込まれた。その過半数は子どもだった。大人も自身の手で「自決」はできなかっただろうし、子どもならなおさら「自決」することはできなかっただろう。

その命は誰によって失われたのか、そのような状況に追い込んだのは誰なのか。ガマで起こったであろうことへの想像力が、沖縄戦を知るときに決定的に重要である。

今回の事件は、沖縄戦で「集団自決」に追い込まれた戦死者、そしてその遺族を再び傷つける断じて許せない行為である。

ある遺族家族は事件の後に「少年らの気持ち分からぬ」と話した。この声からは、今回の事件が何か重大な「一線」を超えていることを、少年たちとともに私たちは考えていかなければならない。

警察発表による情報が制限されているため、私は事件が生じた背景について、建築作業員だった島袋氏(仮名、30代)にインタビューを行った。私と彼は2007年にゴーパチ(国道58号線)で、暴走していた若者たちへの調査で知り合った1

私は暴走族のアジトに通い、彼らが就く建築業(型枠解体)でともに働きながら調査する手法をとってきた。彼らは、しーじゃ(先輩)とうっとぅ(後輩)の厳しい縦社会に生きていた。島袋はそのような過酷な社会に生きる若者のひとりであった。

 

ちぐはぐな集団

警察や地元メディアから発表された今回の少年らの集団についての情報は、腑に落ちないことが多かった。

まず型枠解体工と無職の少年と高校生がつるんでいること、そして「やるな、やるな」と制止する声が上がったということに違和感をもった。

なぜなら、これらのことは、暴走族や建築業の若者が生きる強烈な縦社会では、考えられないからだ。

彼らは同じ地元に生まれ、生活や仕事の境遇は総じて厳しい。また縦型社会で、制止しようとする声がそもそも出てくること、そしてその制止に従わずに強行したことも考えられない。

仮に今回のようなことが生じるとしたら、先輩の指示によって後輩が無理やりにやらされたというパターンしかありえない。

そして「やるな、やるな」という表現は、沖縄では通常、同級生の若者同士で用いられるものだ。同級生なので命令形であるが2回繰り返すことで表現を和らげている2

彼らの集団は16歳から19歳と幅があるにもかかわらず、まるで同級生のようなフラットな関係性であるかのようだ。

1 インタビューは、地元メディアの記者とともに、9月下旬に行った。以下の記述は、一部推測によるものも含まれている。
2 もしこれが先輩からの制止なら「(ドスの利いた)えっ」もしくは「さんけー(やめろ)」で十分である。逆に後輩からの制止ならば、「先輩、ここなんかやばいって、○○先輩か誰かが言ってるの聞いたことありますよ。まやされるみたいっす。ちょっと、やばくないっすか」という表現だろうか。より上位の第三者を会話に導き入れ、「なんか」、「誰か」と、表現をぼかす。後輩はあくまでも自らの意見ではなく、集団内で問題となるという情報を先輩のために差し入れ、改めて考える機会を設定するという立場である。
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