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「排除」発言を引き出した記者が見た「小池百合子の400日」

なぜジャンヌ・ダルクは墜ちたのか

「あの会見」が全ての始まり

安倍政権打倒の先頭に立つはずの希望の星、改革の旗手が一転、リベラル派の「大量虐殺」に手を下す「詐欺師」に豹変したのでは――国民にこんな疑念が浮かんだきっかけは、9月29日の都知事会見だったことだろう。

「前原代表を騙したのか、(それともリベラル派排除のために、前原氏と)共謀したのか」との私の質問に対し、小池百合子都知事(希望の党代表)が笑みを浮かべながら「排除します」と断言した時のことだ。

その4日前の25日午後、安倍晋三首相の解散表明会見の直前に、小池氏は新党・希望の党結成と代表就任、そして「原発ゼロ」を掲げることを表明していた。電波ジャックに成功すると同時に、「原発ゼロ」を訴え続ける小泉純一郎元首相とも面談して激励を受け、「脱原発の旗の下に非自民勢力が結集し、原発推進の安倍政権を打倒するのではないか」という期待感が一気に高まった。

だが、小池氏は千載一遇のチャンスを自ら逃した。民進党の前原誠司前代表が、28日の同両院議員総会で「安倍政権打倒のために1対1の対決に持ち込む。排除されることはない」と説明し、民進解体・希望合流が満場一致で了承されたにもかかわらず、その翌29日、急失速を招く「排除」発言を口にしてしまったのである。

 

私は小池氏が都知事に就任した昨年8月以降、毎週金曜日の14時に行われる小池都知事の定例会見に、できる限り出席するようにしてきた。

しかし、小池氏の「記者選別」はトランプ大統領並みで、詳しくは後述するが、質疑の際には「お気に入り」の記者を明らかに優先して指すのである。フリーランスで、なおかつ小池氏にとって耳の痛い質問をすることが多い私は指されないことがほとんどだったが、この日は偶然か、半年ぶりに指名された。

そこで冒頭のように、民進党との合流に関する前原代表の説明との食い違いについて聞いてみたのだ。

どこか様子がおかしい…

横田:前原代表が昨日、所属議員向けに「希望の党に公認申請をすれば、排除されない」という説明をしたのですが、一方で(小池)知事、(希望)代表は「安保、改憲を考慮して一致しない人は公認しない」と(報道機関に話している)。(前原代表と)言っていることが違うと思うのですが、前原代表を騙したのでしょうか。それとも共謀して、そういうことを言ったのでしょうか。二人の言っていることが違うのですが。

小池知事:すいません。その質問は場所を転換してからお答えさせていただいた方がいいと思いますし、(筆者が?)「独特の言語」を使っていらっしゃるなと今思ったところです。

4日前に小池知事が希望の党代表に就任したために、この日の定例会見は2部制(前半が都政関連、後半が国政関連)になっていた。そこで私は第1部での質疑応答を止め、第2部で再び同じ質問を繰り返した。

横田:前原代表が昨日(28日)発言した「(希望の党に)公認申請をすれば、排除されない」ということについて。小池知事・代表は、安保・改憲で一致する人のみを公認すると。前原代表を騙したのでしょうか。共謀して「リベラル派大量虐殺、公認拒否」(を企てた)とも言われているのですが。

小池知事(=代表):前原代表がどういう発言をしたのか、承知をいたしていませんが、『排除されない』ということはございませんで、排除いたします。取捨(選択)というか、絞らせていただきます。

それは、安全保障、そして憲法観といった根幹の部分で一致していることが政党としての、政党を構成する構成員としての必要最低限のことではないかと思っておりますので、それまでの考えであったり、そういったことも踏まえながら判断をしたいと思います。

現下の北朝鮮情勢などで、これまでの議論に加えてリアルな対応を取っていこうと考える方々もいらっしゃるので、そういったところもしっかり皆様、希望の党から出馬されたいという方を絞り込ませていただくことでございます。ちなみに、その作業は私どもの方では若狭(勝)議員、そして民進の方から玄葉(光一郎)議員が絞り込みの作業に入るということで基本的に任せているところです。

横田:ということは、「安倍政権打倒」を甘い言葉にして、リベラル派大量虐殺、公認拒否・排除をしたということになりませんか。「(綱領にある)寛容な保守」であれば、ハト派からタカ派まで包み込まないのですか。公認しないのですか。そうしないと、安倍政権を倒せないのではないですか。

小池知事:多様性に富んでいるということは、これ(会見)で証明していることになります。とても寛容な記者クラブで…(と言って、私の質問に答えるのをやめて次の記者を指名)。

この「排除いたします」「取捨」という強い言い回しには正直、私も驚いた。驚いているうちに、小池氏は都庁記者クラブと会見そのものに話をすり替えてしまった。いま考えると、小池氏自身も直前の「排除」発言を「まずい」と思い、焦って話題を変えようとしたのかもしれない。

去年7月の都知事選を皮切りに、2月の千代田区長選、そして7月の都議選と、連戦連勝を繰り返してきた小池氏を1年あまりウォッチしてきた私には、これが「勝負師らしからぬ失言」としか思えなかった。