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ホワイト企業を目指すなら、まずは「ブラック顧客」を切りなさい

こんな取り組みをしている企業もある
「ブラック企業ゼロ」の実現にあたっては大変な困難が立ちはだかっているという「ブラック企業アナリスト」の新田龍氏。前回の記事ではブラック企業がのうのうと生き永らえる構造的な要因を大きく4点に分け解説した。続く今回は、4点目の「顧客の問題」を中心に語る。

(4)顧客の問題

<ポイント>
・「お客様は神様」のカン違い
・下請け扱いして理不尽な要求をおこなう発注主の存在

「お客様は神様です」と発言したのは歌手の三波春夫氏であるが、その主旨は「自分の歌を聴きに来てくれるお客様に対して、神前で祈るように、雑念を払って、心をまっさらにして完璧な藝をお見せする」という意味である。

その言葉だけが一人歩きして「俺たちお客を神様扱いしろ」という意味で使われることは真意ではないと、三波氏のオフィシャルサイトでも説明されている。

日本ではおもてなし文化を誇る反面、「サービスには対価が発生する」ことが見過ごされがちだ。おもてなしの心で提供してもらえるサービスは有難く頂戴したいが、従業員の立場に配慮せず、相応の対価も払わず、要求ばかり激しい存在は「ブラック顧客」扱いされる。彼らは当然「神様」ではない。

立場が強い大企業には、自社の労働環境改善の取組と成果をもって「ホワイト化」と喧伝するところがある。それが純粋な自助努力であれば素晴らしいことだが、中には下請企業に仕事を丸投げするだけで、投げる側の自社こそ残業削減できるものの、シワ寄せを受けた下請側の労働環境は悪化するばかり…という事例もある。

 

金曜の夜になってから「週明け月曜朝までにやれ」とムチャな発注をしたり、締切ギリギリになってから仕様変更を要求したり、追加要求に対して然るべき追加料金を支払わなかったり、仕上がりが気に入らないと値引きを要求したり……。

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そんなブラック顧客に対しては、対応する会社側も見積金額を上乗せしたり、納期を長めに設定したりするものだ。厳しい要求をするあまり、巡り巡って自分たちの首を絞めるようなことはやめたほうがよいだろう。

問題解決のための処方箋はいろいろあるが、今回はこのような「ブラックな顧客を切る」という手段で業績や職場環境にポジティブな効果があった事例をいくつかご紹介していこう。

成功事例1:株式会社アクシア

ITシステム開発を手掛ける同社は、2012年9月までは毎日終電、毎週休日出勤が当たり前のブラック企業だった。

しかし、同年10月から現在に至るまで残業ゼロを継続し、「ホワイト企業アワード」(財団法人日本次世代企業普及機構主催)の「労働時間削減部門」で大賞を受賞できるまで変わることができた。自社開発のシステムを用いて業務効率化を果たし、経営者が職場を巡回して残業ゼロを徹底させるといった地道な努力が実を結んだものである。

しかし従前は「明日朝までになんとかしろ」などと無理を言ってくる顧客にも対応していたところ、「残業対応はしない」と180度転換することになるので、事前に取引先には事情を説明し、協力を依頼していた。

ほぼ全ての取引先が好意的に共感・賛同してくれたが、中には「俺たちは休日でも働いてるんだから、お前たちも働いて当然だ!労働者名簿を提出して、名前がある社員は全員休日出勤しろ!」と意味不明な怒りをぶつけてきた顧客もいたという。

結果的にその会社とは契約解除となったが、それでもノー残業を実践した当月に売上は27%もアップするという成果となった。

同社代表の米村歩氏はこのように語っている。

「残業ゼロになって従業員の生産性は高まり、自主的に勉強するようになり、優秀な従業員も増えた。『残業やらないでお客さんから怒られることはないの?』と聞かれることもあるが、ほとんどの顧客は怒るどころか共感して褒めてくれる。稀に、定時後や休日の対応を強要してこようとする会社もあるが、そういう会社は社内の従業員に対しても同じようなことをやっているブラック企業なのだ」