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ブラック企業がいまだにはびこる「4つの悪しきメカニズム」

「ゼロ」に立ちはだかる高い壁
先日の衆院選で大敗を喫した希望の党。同党が掲げた衆院選公約の1つに、「ブラック企業ゼロ」があった。発表当初から不可能だという声が多く挙がったが、その道のプロはどう見ているのか?「ブラック企業アナリスト」として知られる新田龍氏が、「ブラック企業ゼロ」の実現可能性について語る。

実現を阻む4つの問題

先般「希望の党」が発表した公約の中で「ブラック企業ゼロ」が謳われ、大いに注目しているところだ。

昨今は相次いで痛ましい過労死事件が報道され、長時間労働への見直し機運が高まるとともに、厚生労働省は悪質な違反を繰り返す企業の実名を積極的に公開するなど、ブラック企業への風当たりは日々強くなる一方だ。

これまでさまざまなブラック企業問題を取り扱ってきた身としては、ぜひその実現に向けて具体的なアクションを期待したい。

同党の中心的な公約は「消費増税凍結」「ダイバーシティ社会実現」など全部で9つ。それを裏付ける政策案として85件が挙げられていた。その中で、ブラック企業対策に関連がありそうな政策を参考に、「ブラック企業ゼロ」宣言の実現可能性を検討していこう。

<同党の雇用・労働関連政策案抜粋>
・ブラック企業について、残業、休暇、給与などに関する要件を明確化し、該当企業の名前を公表することにより、「ブラック企業ゼロ」を目指す
・長時間労働に対する法的規制
・同一価値労働同一賃金
・働き方改革の推進、再就職支援制度の抜本拡充などにより成長分野への人材移動を円滑化
・「時差 Biz」による「満員電車ゼロ」実現など生活改革を進め、労働生産性を高める

全体的に抽象度が高い表現ではあるものの、現政府が進める「働き方改革」の文脈に沿った形でもあり、総論大賛成というところだ。

 

しかし、その実現には大きな困難が待ち受けている。

「そもそも…」と考えてみてほしい。「ブラック企業」というキーワードが広く語られるようになって約10年。「ブラック企業を見抜く方法」や「抜け出す方法」といった情報にも簡単にアクセスでき、ブラックなことをやらかした会社の名前はネット上を瞬時にかけめぐる。

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なのになぜ、いまだに「ブラック企業に入ってしまう人」や「ブラック企業を辞められず苦労している人」が少なからずいるのだろう。そしてなぜ、そんな悪質な会社が淘汰されず、生き永らえているのだろう。

目前にあるこの現状こそ、「大きな困難」と記した理由である。もどかしい限りなのだが、「ブラック企業ゼロ」実現にあたっては、コレという有効な決定打は存在しない。この国と民族性に根付いた、奥深く複雑に絡み合った数多くの問題や慣習を、同時平行で改善していかねばならないのだ。

では、その「複雑に絡み合った数多くの問題」とはいったい何だろうか。要素別に大きく4つある。詳細に見ていこう。