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日経コラム「つみたてNISAの違和感」に対する私の違和感

「アクティブ投信も必要」ってホント?

「日経新聞の違和感」に違和感

日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡」というコラムに、「つみたてNISAの違和感」というタイトルの記事が載った(2017年10月17日朝刊19面、執筆者は証券部次長の山下茂行氏)。筆者は前回の本連載で、一般投資家に対して、つみたてNISAをお勧めしていたので大いに気になった。

コラムは、つみたてNISAの申し込みが始まったことと、この新制度が「貯蓄から投資へ」の推進役として期待されることを紹介した後、「この新制度に対して『違和感』を訴える声が運用業界から出ている」と述べている。

違和感の対象は、つみたてNISAが信託報酬の安いインデックス型の投資信託(以下「投信」と略す)を多数選んで、アクティブ型の投信の大半を排除したことだ。

 

コラムは「行政が商品選びにまで細かく立ち入っていいのかという疑問もある。違和感の根は深いように見える」と、行政批判まで付け加えて、「違和感」に同意しているので、運用業界の一部の声だけでなく、執筆者自身の意見でもあるように読める。

実際に、10月13日時点で、「適格」とされている114本の投信のうち、アクティブ型は14本にとどまり、日本株で運用するファンドは6本しかないという。

つみたてNISAでは、アクティブ型投信に、信託報酬が1%以下で資金流入している時期が多いなどの条件を課している。

正直なところ、筆者から見ると、「少し緩いのではないか」、「アクティブ・ファンドを『少しは』入れたいと考えて、敢えて条件を緩めたのではないか」という感想を持つのだが、つみたてNISAにもっとアクティブ投信がある方がいいというのは正しい意見だろうか?

「これから優秀なファンド」を見つけられるか?

先の日経新聞のコラムでは、「大手運用会社OB」の、「信託報酬は運用成績を左右する一要素にすぎない。そればかりにとらわれると、結果として優良な投信を排除してしまう」という意見を紹介し、過去20年の投信の運用成績を調べて、「何れも年率のリターンが10%を超える優良な成績」の投信として3本具体名を挙げている(2本はJASDAQなどの市場に投資するファンドで、1本はアジアの製造業に投資するファンドだった)。

これは、「違和感」に対する正しい理由付けになっているだろうか。

先ず、過去に優秀な成績を収めた投信を「後から」見付けることは可能だ。しかし、過去に優秀であったことが「これからも優秀であること」には殆ど関係がない。そして、問題は「これから優秀であるファンドをどう選ぶか」なのだ。

また、信託報酬だけが運用成績を左右するわけではないが、投信のリターンの構造は以下の図のようになっている。

投信の“評価”にあたってのリターンの構造

例えば、日本株式に投資する投信であれば、(1)日本の株式市場全体のリターン、(2)運用者の腕(スキル)によって発生するリターン、(3)信託報酬等の手数料、の3要素の合計で投資家が受け取るリターンが決まるが、市場全体のリターンは日本株に投資する投信で「共通」だし、運用者の腕によるリターンは事前に評価することは不可能だ。そして、手数料は事前に分かる確実な差である。

つまり、評価・選択の段階では、期待値として、手数料が相対的に高い投信は、株式市場が好調であれば儲けが小さく、株式市場のリターンがマイナスであれば損が大きい。期待値を評価すべき、事前の選択段階で、相対的に手数料が高い投信は、将来の市場環境の良し悪しに関係なくダメなのだ。

手数料がいかに投資家のリターンを食ってしまうかについては、米国でも強調されるようになっている。最近、筆者が翻訳本の解説を書いた、“カリスマ・コーチ”アンソニー・ロビンズ氏が投資界の大物にインタビューして作った書籍『世界のエリート投資家は何を考えているのか』『世界のエリート投資家は何を見て動くのか』(上下二分冊で翻訳出版された。鈴木雅子訳、山崎元解説。三笠書房)でも、何度も強く指摘されている。