辺野古移転に抗議する住民たち photo by gettyimages
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米軍ヘリ墜落もスルー…沖縄県民は「国難突破選挙」に怒っている

「嫌沖縄」の空気こそ国難だ

北朝鮮危機を念頭に置いた安全保障問題を争点としておきながら、「国難」で最も大きなリスクを背負うことになる沖縄について、安倍首相はほとんど言及していない。沖縄県民は今回の選挙をどう受け止めているのか。『沖縄返還後の日米安保〜米軍基地をめぐる相克』の著者、沖縄国際大学の野添文彬准教授に聞いた。

衆議院総選挙は、与党、保守系の野党、護憲リベラルを掲げる野党の三つの勢力の争いになっている。対立軸がイマイチわかりづらいものの、問われているのは、憲法改正や消費税などいずれも重要な課題ばかりだ。加えて、北朝鮮危機を背景に、外交・安全保障問題に関心が集まっていることも今回の選挙の特徴である。

さて、そうした外交・安全保障や憲法といった日本の国のあり方を考える上で、在日米軍専用施設の約7割が集中し、日本の安全保障の土台となってきた沖縄を無視することはできない。ここまで5年間続いてきた安倍政治の是非を考える上でも、その沖縄政策を検証することは欠かせないはずだ。

しかし現実を見ると、今回の選挙において、沖縄をめぐる議論はまったく低調だ。選挙戦さなかの10月11日には、沖縄県東村高江で、米海兵隊のヘリCH-53Eが民有地に不時着して炎上した。それでもなお、「沖縄基地問題」についての踏み込んだ議論はまったく行われていない。

安倍首相は「国難」と語るとき、沖縄がさらされている大きな危険を念頭に置いているのだろうか。

 

5割が「本土並み」3割が「全面撤去」希望

戦後日本の安全保障政策は、日米安保条約を基軸としてきた。日米安保の下で、日本が米国に基地を提供する一方、米国は日本に米軍を駐留させ、日本を防衛することとされた。

米軍基地の大部分は沖縄に置かれ、地元は大きな負担を引き受けてきた。米軍が引き起こした多くの事件・事故は、「日米地位協定」の壁によって捜査や調査が阻まれてきた。沖縄基地問題はいまもなお、米国に依存する日本の安全保障政策の構造的矛盾である。

そして今日、沖縄で最大の争点になっているのが、宜野湾市にある普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題だ。

日本政府は、街の真ん中にある普天間飛行場の危険性除去と日米同盟の抑止力維持を両立させる「唯一の解決策」は、辺野古移設だと主張する。これに対して、沖縄県民の多くが、辺野古移設は沖縄への新たな基地負担の押しつけだと反対し、普天間飛行場の早期返還を求めてきた。

米海兵隊普天間飛行場米海兵隊普天間飛行場。オスプレイが配備されている photo by gettyimages

辺野古移設に伴う海岸埋め立てをめぐる日本政府と沖縄県の裁判は、今年2月の最高裁判決で日本政府が勝訴。沖縄県は徹底的に争う姿勢を崩さず、新たな裁判を起こしている。そんなわけで、普天間返還は日米合意から20年過ぎたいまも実現していない。

近年、沖縄県内では、保守と革新という従来の対立軸を超えて、辺野古移設に反対しようという政治勢力「オール沖縄」が形成されている。その中心が、沖縄県知事の翁長雄志である。翁長はかつて自民党沖縄県連で幹事長もつとめた保守政治家だが、彼でさえも辺野古移設に反対し日本政府と対峙しているように、沖縄では基地負担への不満は一つの“臨界点”に達している。

「オール沖縄」の候補者は、2014年の県知事選挙と衆議院総選挙、2016年の参議院選挙と、辺野古移設の是非を争点とする選挙すべてで、自民党の候補者に勝利してきた。今回の総選挙でも沖縄のすべての選挙区で、辺野古移設に反対する「オール沖縄」の候補者と、辺野古移設に賛成する自民党候補者がぶつかっている。

NHKの世論調査(2017年)によれば、沖縄では、約6割の県民が辺野古移設に反対している。同時に、65%の人々が日米安保を重要だと考えている。また、沖縄の米軍基地について、51%が「本土並みに少なくすべき」、26%が全面撤去を望むと答えた。

多くの県民が日米安保を支持するいっぽう、不平等な基地負担は是正されるべきだと考えており、翁長知事も、日米安保の重要性や必要性に理解を示しつつ、「安全保障の問題は国民全体で負担してもらいたい」と話している。辺野古移設問題もこうした文脈で理解する必要がある。

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