企業・経営 オリンピック

東京五輪「オリ・パラ同時開催」の経済効果を試算してみた

【シリーズ人権と数字③】

同時開催、議論はあるけれど

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催までまもなく1000日となります。東京大会では7月24日~8月9日にオリンピック、8月25日~9月6日にパラリンピックを開催する予定で準備が進められています。

ところで、現在準備されている開催プログラムにおいて、今日「当然」と考えられていることで、かつてはそうではなかったことがあります。それは、男女の同権です。いま、男性と女性がひとつの大会に出場することを疑問に感じる人は少ないでしょう。

しかし、1896年ギリシャのアテネで開催された第1回オリンピックでは女性の出場は認められておらず、出場選手241名全員が男性でした。女性の参加は第2回で一部種目が始まり、2012年のロンドン大会のボクシングで女子種目が採用されたことで、ついに全競技で男女が参加する種目が行われるようになりました。

 

他方、いまだ議論が十分成熟していないアジェンダが、健常者と障がい者の問題です。

オリンピックとパラリンピックの同時開催、即ち健常者と障がい者の区別をなくすアイデアが時折提唱されますが、シリーズ『人権と数字』の第3回となる本レポートでは、近い将来、人権に関係の深いこの論点の議論が進み、オリンピックとパラリンピックが同時開催された場合、どれだけの経済効果が生まれるか、といった点について実際に試算し、その意味合いを考えてみます。

なお、ここで想定する「同時開催」は、現状のオリンピック期間にパラリンピックの一部を統合するといった形ではなく、同じ競技場でオリンピック・パラリンピックの種目を同時に実施していく「完全統合」のケースです。

結論を先にして、今回行った試算を明かすと、仮に2020年東京大会で同時開催を行ったと仮定した場合の経済効果は、会期中だけでも1,000億円以上と見込まれます。さらに、記念すべき世界初の同時開催の大会となれば、大会後のレガシー(遺産)による経済効果(東京都の試算によれば2030年までで約27兆円)がさらに増加することも期待できます。

「同時開催」の例はある

オリンピック・パラリンピック同時開催は容易でないとの見方も多くあります。例えばオリンピック委員会は、パラリンピックから一部の競技や種目を選んで、現状のオリンピックの期間内で両ゲームを行う場合を「同時開催」のひとつの形として想定しつつ、この場合には競技数の多い種目を期間内に終えることが難しくなること、競技場の増設が必要になること等の問題点を挙げています。

また、英国のパラリンピック選手であるTanni Grey-Thompson氏はBBCのインタビューにおいて、仮にパラリンピックのうちのごく少数の競技だけをオリンピックに取り入れる形で「同時開催」した場合、パラリンピックがオリンピックによってその存在を消されてしまうことを懸念しています。たしかに現状のオリンピック期間にパラリンピックを一部統合するという形で「同時開催」を行う場合は上に挙げられているような問題が生じるでしょう。

しかし本来、人権的な見地で目指すべき「同時開催」とは、上述のようなオリンピックをメインとし、パラリンピックを付帯イベントとするべきではありません。双方が区別なく同じ扱いの競技として開催されるもののはずです。

そう考えた場合、オリンピック、パラリンピックそれぞれ固有の競技についてはともかく、両者に共通する競技については、オリンピックとパラリンピックの種目を同じ会場で順次実施するという「完全統合」形(この場合、当然にして開催期間は現在のオリンピックのみの期間にはおさまらない)が考えられます。

実際このような形で「同時開催」を行っている国際スポーツ大会も存在します。英連邦に所属する国や地域が参加し4年ごとに開催される競技大会である「コモンウェルス・ゲームズ(Commonwealth Games)」です。

同大会では複数の競技についてパラスポーツがひとつの種目として位置付けられています。例えば2014年にグラスゴーで開催された大会の日程表を見ると、水泳ではある1日の間に男子100m自由、50m背泳ぎが行われた後、男子パラスポーツの200m自由が、陸上でも女子100m、400mが行われた後に、女子パラスポーツの100mが行われるといった形での運用がされています。

新生・ブルーバックス誕生!