国際・外交 環境・エネルギー 週刊現代

欧米人が日本人に「捕鯨は絶対許さない」と言い続ける深い理由

「伝統」という言葉の意味が違う
佐々木 芽生

―取材は'10年に始まり、途中、震災を挟んで映画公開までに7年の時間を要しています。

'10年の取材だけでも映画にはなったと思いますが、それではおそらく「衝突が続いています」で終わりだった。でも、時間をかけたことで結果的に、捕鯨問題の是非だけでなく、人間同士のコミュニケーションの問題や、違う価値観を持つ人々とどう折り合いをつけていくかという、大きく普遍的なテーマを孕むことになりました。

今の世界のあり方そのものを映し出すことができ、物語が自然と熟成されたような気がしています。

 

執筆にあたっては、人間とクジラを巡る歴史的な考え方の変遷などを調べ直し、また、反対派から何かにつけて持ち出されるクジラ肉に含まれている水銀の問題についてもあらためて調査しました。

撮影の段階で知っていたことでも、言葉に整理してまとめるというのは、なかなか大変な作業。でも、何となくわかったつもりになっていたことが、より明確になりました。

―〈ドキュメンタリー映画制作とは、自分の心を動かすものの正体を探すために旅に出るようなもの〉と記されているのが、印象的です。

長い旅で、困難は今も続いています(笑)。制作中は反捕鯨団体から個人攻撃されたこともありましたし、公開後も捕鯨問題にアレルギーのある方がいたり、そもそも無関心だったり……。でも、旅は始まったばかり。海外での上映もこれからです。

アートコレクターの夫婦を追った『ハーブ&ドロシー』もそうでしたが、パッと見て面白いというのではなく、自分の中に長く残ってフツフツと発酵してくるものが映画になる。強烈に心を動かされるものが何なのかを見つめ、これからも追いかけ続けたいと思います。

(取材・文/大谷道子)

『週刊現代』2017年10月28日号より