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不倫相手の妻を「惨め」とコケにするアラサー女の刻一刻

A子ちゃんとB美ちゃんの複雑な感情⑦

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第4試合「不倫」対決のAサイド。

今回のヒロインは、いわゆる女受けの悪いアラサー独身女性。彼女の不倫に対するスタンスとは?

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女友達が極端に少ない

「結婚するがいい、そうすれば後悔するだろう」とは絶望を死に至る病と呼んだ哲学者の言葉だが、彼女も最近、彼ほどではないにせよ結婚に対して大変悲観的なことをよく言う。3年ほど前、帰国直後の彼女と丸ビルの安いイタリアンで飲んだ時には、もうほんとに仕事嫌い、結婚したい、と言っていたはずだった。

 

彼女は29歳になる直前までとある外資系企業のシンガポール支店で働いていた。と言っても別に何年も向こうに行ったきりではなく、東京にもしょっちゅう帰って来ていたため、基本的には東京の男とくっついたり別れたり、ちょこちょこつまみ食いをしたりと日本で仕事をしていた時とあまり変わらない生活をしているようだった。

学生時代から一貫して、自分から追いかけたり恋い焦がれたりしない代わりに、誘われれば自分の好みから程遠く、また条件が大したことのない男であっても無下に断ったりしない、心の広さを持ち合わせていた。結果的に、週末やイベントは必ずデートの約束が入っていて、それなりに多忙であった。

彼女は身長がやや高めなのを気にして、ヒールの低い靴ばかり履いている。それなりに高収入のくせに私服は女子大生が着がちなマルイやルミネ系ブランドを着ていて、でもそれが大抵の男にとってはグッチのドレスよりも価値があるのは十分承知しているため、同性からすると可愛げがない、異性からすると可愛げしかないタイプの女である。

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時々髪の色を変えるが、どれもマルイやルミネやナチュラルな下がり眉に馴染む色で、それなら別に染めなくてもいいのに、と思ってしまうような変化なのだが、そういった細部は結構重要であるらしかった。

彼女にも悪いところはあって、それが女友達が極端に少ない理由でもあるのだが、男性に平気で好意を振りまいて、その好意に色めきだった男の勘違いを訂正せず、そのまま野放しに期待を持たせておいて、その勘違い自体を嗤う。

男にモテる女というのが、男にとって「好きにならせてくれる」女だとしたら、彼女はそういう女だった。だから彼女の携帯電話は、望みが30%くらいの男からも、望みが15%くらいの男からも、しきりにLINEが入ってくる。

ただ、彼女の潔いのは、そういった事情によって女の子に距離を取られようと、陰口を言われようと、本命の彼に尻軽だと勘違いされようと、全く意に介さず、生き方を曲げないことである。そして、年収800万円の彼女は、女に嫌われようと結局独身のまま30歳になろうと、大変華やかな暮らしを継続している。