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医療・健康・食 ライフ 週刊現代

死に至るED「勃たない」は万病のサインだった

知っておきなさい。損はないから

下半身からのメッセージ

「血管は、肝臓や膵臓と同じ、『物言わぬ臓器』。不健康になっていてもその兆候が非常に現れにくい。しかし、男性の場合は、ただひとつ症状が現れる部分がある。それがペニスです。

EDだということは、動脈硬化が進んでいる、ひいては、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まっていると考えていい。『物言わぬ血管』が静かにメッセージを送っているのです」

こう語るのは、池谷医院院長の池谷敏郎氏だ。

多くの男性は、EDになったとき、恥ずかしさと、「もう年だから」という自分に言い聞かせるような諦めのなかで、症状を放置しがちだ。病院に行く人の割合が1割以下だということは第1部でも指摘した通りである。

しかしまったく大袈裟でなく、EDの症状が現れた後に、血管に関係する「死に至る病」が発症するケースは多い。放置しておくと大変なことになる。

なぜペニスは血管の「異変」に敏感なのか。千葉西総合病院の泌尿器科部長・久末伸一氏が解説する。

「ペニスの動脈は、体内のなかで一番細く、その直径は1~2mmほど。心臓を取り巻く冠動脈が3~4mm、体のなかで一番太い血管が6~8mm程度。

動脈硬化が起きたときに、体で最も詰まりやすいのがペニスの動脈なのです。ここが詰まって勃起不全が起きているということは、ほかの場所でも遠からず動脈硬化が起きることのサインと言えます」

昭和大学藤が丘病院副院長の佐々木春明氏が自身の診察の経験を振り返る。

「私は、EDで相談に来た患者さんの動脈硬化をチェックすることにしています。以前、患者さんの頸動脈にエコーを当てて様子を見たところ、狭窄が進んで、このまま行けば脳梗塞、心筋梗塞という例があり、慌てて循環器科を紹介し、治療を受けてもらいました。

泌尿器科で血管の問題が見つかって命拾い、というのは、珍しいことではないのです」

 

循環器系の病気は早期発見が救命の鍵になる。急性心筋梗塞の発作が起こった場合、病院に搬送される前に心停止してしまう割合は14%にものぼる。

埼玉県に住む藤田雄二さん(64歳・仮名)も、頭を掻きながらこう振り返る。

「いや驚きました。5年ほど前から勃起をしにくくなって、思い切って大学病院で診察してもらったら、先生から『循環器科を受けてください』と言われたんですから。

それで循環器科の診察を受けたら、冠動脈(心臓に血液を送る太い血管)が詰まりかけていることがわかったんです。

結局、すぐにステント(血管を拡張するための金属製の管)を入れて治療することになりました。医師からは『もう少し放っておいたら心筋梗塞でしたよ』と言われて背筋がゾッとしましたね」

こう言われても、「もう長年の間EDだけど、自分はそんな疾患にはかかっていない」と考える向きもあるかもしれない。しかし、それはEDを甘く見ていると言わざるを得ない。

こんなデータがある。札幌医科大学名誉教授の熊本悦明氏の研究によれば、「中高度の勃起障害がある男性」と「勃起障害のない男性」について、10年以内に心疾患と脳梗塞疾患を患う可能性を比較すると、前者の男性のほうが、それぞれ後者に比べて65%、43%も疾患を発症しやすかった。

EDを放置していたら、ある日突然、胸を掴まれるような苦しみが襲い、意識を失う――そんなおそろしいシナリオも十分ありうる。