小鳩W辞任説も浮上した
小沢一郎「起訴相当」の衝撃

7月参院選を直撃

 政局が一段と緊迫してきた。

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、検察審査会(以下、検審)が小沢を「起訴相当」と議決した。鳩山由紀夫首相は米軍普天間飛行場の移設問題で迷走を続け、公約した5月末決着はもはや絶望的だ。結論から言えば、私は小沢も鳩山もダブル辞任する可能性が強くなったとみる。

 検審の議決を受けて、東京地検は再捜査したうえ原則3ヵ月以内に小沢を起訴するかどうか結論を出さなければならない。まず地検が再捜査でも不起訴と結論づけたとしよう。その場合、検審が再審査をすることになる。

 今回の議決要旨をみると「政治不信が高まっている状況下にもあり、市民目線からは許し難い」とか「起訴して公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきである。

 これこそが善良な市民としての感覚である」と極めて強い調子で起訴を求めている。

 検審の顔ぶれが変わったとしても、この「市民感覚路線」はそのまま維持される可能性が高いのではないか。とすると今回、地検が再び不起訴と決めたところで、検審の結論が2回目で覆るとは考えにくい。その場合、小沢は結局、強制的に起訴されることになる。

 仮にそんな事態になれば、地検にとって面目丸つぶれである。以上のような展開を予想して、地検は「どちらにせよ小沢が起訴になるなら、自分たちの手で」と考えるのではないか。つまり再捜査のうえで地検自身が起訴するシナリオである。

 地検が起訴するためには新たな証拠も必要になる。

 この点は3月5日付けコラム「菅直人が『消費税引き上げ』に転向した理由 小沢問題の行方は『マルサ』の手に」でも指摘したように、地検に加えて国税庁のマルサ(調査査察部)も押収した資料の読み込みを続けている模様だ。不起訴処分を決めた2月時点から執拗に捜査を続けている。

 つまり地検が前回の決定をあらためて、新たに起訴に踏み切る可能性は十分にあるとみるべきだ。少なくとも「起訴はない」と断定はできない。

 小沢にとっては、これから7月末までの3ヵ月が極めて微妙な期間になる。

 地検が再捜査を続けている間、メディアは「小沢問題」に注目し続ける。ラッシュのような小沢疑惑報道が再燃するかもしれない。

 7月には参院選がある。小沢がいくら民主党への支持を訴えても、足下で自分自身に対する検察の捜査が続いている状況になる。

 地検は結論を急ぐかもしれない。7月に近づけば近づくほど、地検の結論が参院選に影響を与えてしまうからだ。「政治捜査」という批判を避けるためにも、早めに結論を出すか、あるいはいっそのこと、逆に結論を参院選後に持ち越す可能性もある。

 結論持ち越しの場合は、間違いなくメディアの欲求不満が高まる。その結果、メディアの報道は小沢と民主党に対して「起訴もありうる」というフィルター越しにならざるをえない。いわば小沢と民主党を「色眼鏡で見る」状態になるのだ。

 地検が7月までに起訴の結論を下した場合、民主党が被る打撃は決定的だ。参院選の勝利はとてもおぼつかないだろう。地検が7月までに不起訴の判断を下したところで、検審が再審査することに変わりはない。

 以上をまとめると、地検が7月までにどういう結論を出すにせよ、あるいは出さないにせよ、小沢はもはや「起訴問題」から自由になって参院選を戦うことはできなくなった。こうした宙ぶらりんの状況に対し、小沢がどう出るか。

 幹事長を辞任せずに中央突破を図る道もありうるが、それはリスクが大きい。もし現職幹事長が起訴されれば、その直後の参院選という最悪シナリオでも勝利できるほど、民意は甘くない。リスクを最小限にとどめようとするなら、地検による起訴の可能性を織り込んで事前に辞任の道を選ぶのではないだろうか。

小沢に好都合な鳩山の苦境

 鳩山首相も行き詰まっている。

 普天間問題で鳩山は28日、鹿児島県徳之島出身の徳田虎雄元衆院議員と会談し、なお徳之島案に固執する構えもみせている。だが、地元の反対の強さをみても徳之島案でまとまる見通しはない。結局、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部の現行案を基本に、埋め立て方式からくい打ち桟橋方式に修正する案に戻りつつある。

 だが、この修正案でも、やはり地元が納得する見通しは立っていない。なにより「県外・国外移設」と言ってきた公約に違反するのはあきらかである。鳩山の苦境は小沢にとっても好都合な面もある。鳩山とセットにすることで、自分自身の政治責任を薄める効果もあるからだ。

 民主党内は水面下でポスト鳩山をにらんだ動きが活発になっている。

 消費税引き上げで菅直人副総理兼財務相と仙谷由人国家戦略相が歩調をそろえる一方、仙谷は本州四国連絡高速道路の料金問題で前原誠司国土交通相と対立している。前原と仙谷は同じ反小沢7人衆のはずだったが、鳩山の足下が揺らぐにつれて、その結束もばらけてきたようにみえる。

 反小沢で結束していた7人衆は、「次」をにらんだ瞬間に、実は互いにライバル関係だったことがはっきりしてきた。財務省は増税路線に傾斜した菅と仙谷の政権になるなら、ひとまずウエルカムであるに違いない。

 霞が関のベテラン官僚が言った。

「自民党は小沢と鳩山のダブル辞任をもっとも恐れている。そうなると、ポスト鳩山の最有力候補は菅、その場合は官房長官に仙谷、幹事長には細野豪志副幹事長あたりか。小沢と鳩山の2人が辞めて、民主党が新鮮なイメージを打ち出すと、舛添(要一前厚生労働相)がいなくなった自民党は打つ手がない」

 どうやら、ここから7月までは大政局になりそうだ。

(文中敬称略)

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