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空前絶後のブーム到来!「BLマンガ」なにがそんなにスゴイのか

BLを読めば、新たな視点を獲得できる
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なぜ女性は「BLマンガ」を読むのか。空前のBLブーム、その真相を明らかにする。

ボーイズ・ラブとは何なのか

男どうしの恋愛物語。少女漫画の世界では歴史の長いモチーフであり、かつては少年愛の漫画、現在は「BL」(ボーイズ・ラブの略、ビーエル)という呼び方で、根強い人気を獲得し続けている。

男性同性愛という主題が、なぜ女性向け漫画で人気ジャンルであり続けているのか。多くの男性には理解しにくい現象かもしれないが、この現象は日本社会や歴史を読み解く重要な鍵を含んでいる。

そもそも、少女漫画の世界で男性どうしの恋愛描写が注目されたのは、1970年代に遡る。

萩尾望都『トーマの心臓』(1978年)は、ドイツのギムナジウムを舞台にし、全寮制の男子校で繰り広げられる、生徒同士の思慕を描き出した。竹宮惠子『風と木の詩』(1982~84年)は、フランスを舞台に、やはり寮制男子校における生徒間の恋愛を描いたものである。

「花の24年組」と少女漫画史上で讃えられる巨匠によって描き出されたこれらの漫画は、今も少女漫画の古典的名作として評価されている。

しかし、その後に発展してきた女性向けの男性同性愛の漫画は、これらの古典的な名作とは趣を異にする。『トーマの心臓』『風と木の詩』に描かれる少年たちは、少女漫画ならではの理想化された美少年、美青年が主役であった。

舞台もドイツ、フランス、という海外で、海外旅行がまだ現代ほど一般化していなかった時代に、幻想的な夢の異国で若い美少年が純粋な愛を繰り広げる、といった、日本人読者にとってはリアリティのない世界を描き出していた。

にもかかわらず、これらの作品が古典的名作とされているのは、その高い文学性にある。

 

「花の24年組」の漫画家たちは、トーマス・マン『ヴェニスに死す』やヘルマン・ヘッセなど、海外の映画、文学に影響を受け、思春期の青年たちの悩みを、青春文学としての内実を備えた思索的次元で描き出した。

その主題の普遍性が、友情や人間関係に悩む女性読者をいまでも惹きつけてやまず、「青春のバイブル」との声もきかれるほどである。

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若い男子どうしの恋といえば、一見、特殊にうつるかもしれないが、男子校を舞台にした恋愛ものが文学的に評価されるのは、なにも少女漫画に限ったことではない。

三島由紀夫『仮面の告白』(1949年)、福永武彦『草の花』(1967年)にも、男子校の生徒間の恋が描かれており、実は文学のモチーフとしては決して目新しいものではないのだ。

日本の戦前の高等教育は、男子校、女子校にわかれており、戦後まもない人気映画『青い山脈』(1949年、石坂洋二郎原作)において、共学にすると男女間に恋愛沙汰が起こってふしだらではないかという議論もなされているほどである。

思春期をすごす男子校で、男女交際の代替物という側面も含みながら、男子同士で思慕を抱くのは、戦前には珍しくない現象であった。

歴史を遡れば、森鷗外『ヰタ・セクスアリス』(1909年)にも、明治の書生間で、「硬派」といわれる書生どうしの恋が普通に行われており、女性に恋をする男は「軟派」と軽蔑されていたほどである。

いや、こうした現象は決して過去の遺物ではなく、男子校出身の読者の方にとっては、そういえばうちの母校でも……と思い当たる節がおありの方もいらっしゃるのではなかろうか。

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