photo by iStock
不正・事件・犯罪 エンタメ ライフ

血→爪→小指→ふたりの命…「心中」が日本文化になるまで

累計20万部「禁止シリーズ」執筆秘話

それは日本特有の風習

男女が情死することを、一体なぜ〝心中〟というのだろうか――

そんな疑問から『出版禁止』(新潮文庫)の執筆は始まった。

出版禁止』は私が書いた初めての長編ミステリー小説である。2014年に単行本が出版され、今年4月に文庫版が発売されている。この小説は、「出版が禁止されたルポルタージュを紹介する」という体裁をとった疑似ノンフィクションだ。紹介するルポルタージュはフィクションであるが、現実の起こった事件であるかのように描写している。

 

私が制作する映像作品の『放送禁止』や『出版禁止』など小説は、総じて「禁止シリーズ」と呼ばれている。ほかにも短編集の『掲載禁止』(新潮社)、『放送禁止』(角川ホラー文庫)、そして実話の驚愕事件を集めた『検索禁止』(新潮新書)がある。「禁止シリーズ」とは、無理やりに定義すると「本当の事件かと錯覚するようなミステリーで、驚愕のオチが待っている作品」といったところだろうか。禁止シリーズはおかげさまで好評を博しており、累計20万部にまで及んでいる。

出版禁止』を書くきっかけは、『放送禁止』を制作したことに端を発する。『放送禁止』は、2003年からフジテレビの深夜で放送されていたドラマシリーズで、「放送禁止になった番組を公開する」といったフェイクドキュメンタリー番組だ。

『放送禁止』
テレビ局のテープ倉庫には、何らかの理由で放送が差し止められた、お蔵入り番組が数多く眠っている。『放送禁止』とは、そんな番組を発掘し放送するといった体裁の、フェイクドキュメンタリーである。番組はオカルト的な結末で終わるが、散りばめられた伏線を辿ってゆくと「もう一つの真実」にたどり着く。だが本当の結末は番組内では明かさず、視聴者の想像に委ねるという形式。

1回の特番で終わるつもりだったのだが、ネットを中心にじわじわと話題を呼び、定期的に続編を制作。「大家族」「ストーカー」「隣人トラブル」「殺人サイト」など、その時代に話題となっている社会現象をテーマに据え、テレビ版7本、映画版3本作らせてもらった。

『放送禁止』を作ってから、私への仕事依頼はこのような作品を制作して欲しいというものが多くなった。ハリウッド映画の続編である『パラノーマル・アクティビティ第2章TOKYO/NIGHT』(2010年)は、悪魔に蝕まれてゆく姉弟の姿をとらえたフェイクドキュメンタリーのホラー映画である。この作品は、『放送禁止』を見た映画プロデューサーから、監督の依頼を受けた。

フジテレビで放送された『eveのすべて』(2012年)も、『放送禁止』の手法を発展させた企画である。ADM(アダム)と呼ばれる謎の人物から、一人暮らしの部屋や職場など、行動のすべてを監視されている女性。彼女はeve(イブ)と呼ばれている。番組自体は、女性の盗撮映像で構成されており、回を重ねる毎に、ADMの秘密が明らかになってゆくという構成である。新聞のラジオテレビ欄などの番組表には載せず、いつ放送されるかも分からない、番組尺も回によって違うという、神出鬼没の企画だった(『eveのすべて』は現在でも視聴可能なのでぜひ→https://www.youtube.com/user/ADMadmirer)。