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不正・事件・犯罪 週刊現代

空から鉄板が!死にかけたのに慰謝料わずか50万円

東京都心も危ない?

実はしょっちゅう起きている

「今回の場合、パネルが垂直に落ちていれば、人体を切断していたとしてもおかしくはなかった。空からの落下物はどのように身体に当たるかによってダメージが変わってきます。

当たる面積が小さく、圧力が大きければ、そのぶんダメージも大きい。肉に針を刺すのが簡単なように、小さな物体でも、グサッと頭蓋骨を貫いて脳髄まで入ってしまえば、致命的です」(近畿大学人間工学科元教授・渋江唯司氏)

9月23日、大阪市北区西天満のオフィスビルやマンションが建ち並ぶ路上。お昼前、休日を楽しむ家族連れが行き交うなか、空から看板のような物体が落ちてきた。

走行中の乗用車に当たり、乗っていた2人の女性にケガはなかったが、車の屋根や後部窓ガラスが破損。落下物は関西国際空港を離陸したKLMオランダ航空機の翼付近のパネルだった。縦107cm、横110cm、重さは4.3kgもある。

パネルが一度道路に跳ね返って車に当たったからまだよかったものの、直撃していたら車は大破、乗っていた人も死んでいたかもしれない。

そして、そのわずか4日後の27日、茨城県内の会社の敷地でも全日空機の胴体に使われるパネルの一部が落ちているのが見つかっている。

こうした部品の落下事故は実はしばしば起きている。国土交通省が公表した調査結果によると'09年から昨年10月末までに全国で437件の部品脱落があったという。成田空港では'78年の開港以来、判明しているだけで158件の部品落下が起きている。

千葉県成田市の荒海地区。見上げると次々と航空機が、真上を飛んでいく。高度も低く、騒音も尋常ではない。何度も会話を中断しながら、落下物の被害を受けた農家の男性に話を聞いた。

「午後の2時過ぎだったかな、隣のハウスから耳慣れないボスッという鈍い音がしたんです。すぐに行ってみるとハウスの屋根に穴が空いていて、地面には500gほどのスプリングが転がっていました。私がいたところからわずか3mの距離ですよ。

もし、私の真上に落ちていたらと考えると身体が震えました。それ以来、飛行機の音がすると物陰に隠れるようにしています」

 

まさに青天の霹靂。予測不能のアクシデントだが、このような飛行機からの落下物事故では賠償金はどのように支払われるのか?

大阪の事故のように、明らかに航空会社側に過失があり、会社も特定できている場合には、その航空会社が賠償責任に応じることになる。

また、航空会社が特定できない場合でも、一般的な自動車保険や火災保険に入っていれば、「外部からの物体の飛来」は保険金支払いの対象となるので、修理代は自分の保険から支払われる。

ただし、慰謝料は保険では賄えない。もし被害にあった精神的ダメージが大きく、慰謝料を求めるならば新たに訴訟を起こすしかない。宇宙法に明るく、上空からの落下物による事故にも詳しい弁護士、作花知志氏は言う。

「払われる金額は『死ぬほど怖い思いをした』といっても数十万円程度。今回の大阪での事故の場合は、被害者は飛行機から物が落ちてくるという日常では思いもよらない事態に遭遇したわけですから、通常の交通事故よりショックも大きいと考えられるので、それなりの額が期待できるが、せいぜい50万円程度でしょう」

あやうく死にかけたにもかかわらず、わずか50万円とは、あまりに少ないように思える。だが、そもそも落下事故は事例が少なく、自動車事故のケースに当てはめて慰謝料の額を決めるしかないのだ。

さらに被害者にとっては訴訟費用も負担となる。

「今回のKLMのような大きな会社は日本国内に支社があるから裁判も国内でできますが、そうではない海外の小さな航空会社が相手の場合は、事故自体は日本国内で発生しても、本社がある国で裁判を起こさなければいけなくなる可能性があり、費用もかかります」(作花氏)