公開訓練中のSAT(写真提供:宮嶋茂樹氏)
警察 特殊部隊 インテリジェンス

19年間「日陰者」だった特殊部隊の「涙なしには読めない秘史」

表立っては装備品も買えず…

涙なくては語れない「切実すぎる歴史」

日本には、現在でこそ対テロ特殊部隊が複数存在する。

たとえば、陸上自衛隊所属の特殊部隊である特殊作戦群は、歌舞伎町や渋谷の雑踏の中で、写真1枚だけを手掛かりにターゲットを探すといった、ユニークな訓練を行っている、現代的な部隊だ。

 

日本の特殊部隊の中では、比較的最近、発足したこの特殊作戦群は、準備にたっぷり時間と予算を掛け、満を持してのスタートだった。隊員たちには、最初から特殊拳銃や特殊小銃、黒い戦闘服であるアサルトスーツが支給されていた。

しかし、日本初の特殊部隊だった、警視庁の特殊部隊、SATの発足には、涙なくして語れない(?)、切実な歴史があることをご存じだろうか。

[写真]公開訓練中のSAT公開訓練中のSAT(写真提供:宮嶋茂樹氏)

「SAT」の名は、いまや多くの人が一度は耳にしたことのあるものだろう。対テロ専門部隊であり、正式名称は「特殊急襲部隊 Special Assault Team」である。

アメリカにならって英語での略称をつけたわけだが、実はそのアメリカにおいては、「assault」に「強姦」(sexual assault)という用法もあるということが問題視され、アメリカ警察の特殊部隊であるSWATなどは、当初は「Special Weapons Assaul Tactics」と言っていたものを、こっそり「Special Weapons And Tactics」に直した経緯がある。日本警察も国際化の流れの中では、早期に見習ったほうがよさそうだ。

現在では、日本警察のSATは、東京の警視庁と大阪・北海道・千葉・神奈川・愛知・福岡・沖縄の各道府県警に置かれ、11個班約300名が在籍している。

1977年に日本赤軍が日航機をハイジャックした、いわゆる「ダッカ事件」を契機に、当時の警視庁は「対ハイジャック部隊」なるものを秘密裏に立ち上げた。そして、隊員となる警察官を数名、ドイツの特殊部隊GSG9に派遣させ教育を受けさせた。

なぜGSG9だったのかというと、ダッカ事件直後に発生したルフトハンザ・ハイジャック事件で、GSG9が犯行グループを見事、制圧したためと言われている。

「存在しない部隊」に予算はつかない⁉

この対ハイジャック部隊、警視庁では第六機動隊の中に「特科中隊」として置かれたほか、大阪府警内では「零中隊」などと呼ばれていたようだ。1979年に発生した三菱銀行人質事件などには、大阪府警から零中隊の一部隊員が出動したと言われている。

やがて対ハイジャック部隊は名称を「Special Armed Police」、通称SAPと変えた。これが、現在のSATの前身となるのだが、世間に対しては「秘密の部隊」とされ、公式書類も発表できずにいた。

だが特殊部隊と言えども、国家の機関たるもの、予算を要求・確保するというプロセスを経なければ、首が回らない。ところがSAPは「この世にない」部隊であって、予算もつかない状況だった。まとまった資金など、手に入るはずもない。