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希望の党・経済ブレーンが初めて明かす「ユリノミクス 本当の狙い」

批判にもすべて答えます
安東 泰志

「国際金融都市・東京」構想

その一つが「国際金融都市・東京」構想です。昨年の9月、この構想を立ち上げた時の問題意識は、既得権益と既成概念にがんじがらめになっている日本の金融産業界にメスを入れることでした。

日本の金融は商業銀行が牛耳っており、融資先の企業に対して「ああしろ、こうしろ」と口をはさんできました。貸付債権の保全ばかり考える銀行主導のガバナンス構造の結果、企業も大胆な成長戦略を描けずに、東芝のような一流企業まで、倒産の危機にさらされてしまった。

また東京という都市に目を向けても、その凋落は必至です。経済の根幹を支える金融が時代遅れの規制や税制にさらされていて、銀行ばかりが肥大化する一方で、国際金融センターとして必要な内外の資産運用業者やフィンテックを集積できず、かつて世界第3の都市と言われていた東京は、現在は5番手にまでランクを落としてしまいました。

 

今や香港やシンガポールのアジアの金融都市の後塵を拝する結果となったこの東京の凋落は、まさに今の日本が置かれている状況を例示しているではありませんか。ここに小池さんはメスを入れてきたのです。

しかもこの改革は、なにも小池さんの独断専行で進めてきたわけではありません。全銀協や日証協のような業界団体も巻き込んで、懇談会をつくって議論を重ねてきた。そしてその答申が間もなくまとまり、そこに東京都は予算を付けることになっています。着実に金融都市構想は実現に向かって進んでいる。

こうした業界団体との綿密なコミュニケーションのうえで改革を進める小池さんの政策実行力を目の当たりにしてきた私は、彼女に期待せずにはいられないのです。

さて、これまで述べてきたこと以外にも、「希望の党」が発表した公約には様々な批判が寄せられています。例えば国民の最低限の生活費を保障する「ベーシックインカム(BI)」や企業の貯金に課税する「内部留保課税」です。

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BIは当面は実証実験になると思いますが、少なくとも民主党政権下で行われた「子ども手当」や、自民党政権が主張する「保育・教育の無償化」よりは、所得再分配施策としてよっぽど合理的で、効果の高い方法であり、規模によりますが、税制改革や年金改革など総合的な政策として進めて行けば、財源の裏付けも取れていきます。

一方で内部留保課税は、批判の通り、私もそのまま実行されていいとは思っていません。もし企業の内部留保に課税すると、法人税との2重課税になってしまうからです。今、日本の法人税は約30%。この重税が日本に対して外資の投資が起こらない大きな要因です。さらに内部留保にまで課税しようとするならば、日本への投資はさらに敬遠されてしまうでしょう。

とはいえ、小池さんはそんな単純にこの内部留保課税を考えているわけではありません。課税すると見せかけて、給与の増額や株主への還元に資金を使うように促すのです。さらにここにもう一手加われば、内部留保課税は実に有効な経済政策となるでしょう。

たとえば現在、金融庁やGPIFが主導して旗をふる、コーポレートガバナンスコードの深化と徹底です。現在、配当性向を上げるなど株主還元を行う企業が増えていますが、これをさらに徹底させることで、日本企業に対する投資家の評価を向上させて株価を上げて行く。一方で配当性向を上げたくない企業には給与増額を促していく。

「配当性向」と「給与増額」の二者択一を企業に迫っていくことで、企業の内部留保は市井に出て行くことになる。こうして民間で経済が循環し始めると、おのずと賃金が上がっていくことになります。実質賃金が十分に上がってきて、ようやく消費税を10%にあげることが可能になるのです。