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中国政府が閉鎖を勧告した「北朝鮮レストラン」に行ってきた!

中朝国境の街・丹東の6店舗をレビュー

もっとも好きな歌は、将軍様が作った歌

「首領よ、命令のみ下されよ。一気に駆けて、仇敵米帝をこの地より掃討せん!」

9月某日、中国遼寧省の都市・丹東の北朝鮮レストランに、北朝鮮の歌「首領よ、命令のみ下されよ」が響き渡った。私がリクエストしたものだった。

歌ったのは、同レストランの女性従業員。前日にもこの店を訪れていた私は、この日、2階の個室に通された。

部屋にはカラオケが置かれており、好きな歌をBGMに食事ができるという趣向だった。自分で歌うのも可だという。

丹東名物、金日成・金正日「グッズ」。北朝鮮の切手集のはずが、なぜか日本の切手も含まれていた

せっかくなので、私は次々に希望を出した。はじめは穏当に「アリラン」から。そして次第に「北朝鮮らしい歌」に移行していく。

「学ぼう」「泉のほとりで」「燃え上がれ焚き火よ」「われらは愛する」「これ見よがしに」「ひとつの大家庭」――。

付きっきりで大同江ビール(北朝鮮のビール)を注いでくれた女性従業員は、次第にみずから歌ってくれるようになった。その歌声は、個室で独占するにはあまりに惜しいハイレベルだった。

(右)有名な北朝鮮のビール・大同江ビール、(左)は焼酎・平壌酒

「社会主義を守ろう」「朝鮮人民軍歌」「一気に」「進軍また進軍」「われらの727」「党に従い、青年たちよ前へ」「突破せよ、最先端を」――。

彼女は、行進曲調の歌でも嫌がることもなく、むしろ勇ましく手を振り、足踏みをして、ノリノリで応じてくれた。最後は、権力継承のテーマソングである「永遠にこの道を行かん」でしめた。

なお、カラオケに入っていない歌もあった。

「朝鮮労働党万歳」「この地の主人たちは話す」「死を米帝侵略者どもに」「行こう白頭山へ」「われらは万里馬騎手」「社会主義前進歌」など。

朝鮮戦争に参加した中国軍の軍歌「中国人民志願軍戦歌」は、中国の北朝鮮レストランにはつきものだが、カラオケには入っていないらしかった。

 

途中、女性従業員にもっとも好きな歌を訊いてみた。すると彼女は即座にカラオケを操作して歌いはじめた。

その歌は「祖国の懐」。行進曲調ではない、穏やかなメロディーが室内に流れる。

歌い終わると、彼女は私のスマホを指差して、音声認識機能を使うように促した。こちらがグーグル翻訳のアプリを起動して差し出すと、朝鮮語でスマホに話しだした。

そして、画面に表示された翻訳は――。

「わたしたちの将軍様が作った歌です」

そう、彼女がもっとも好きな歌は、金正日が作った歌だったのである。ここはお気楽な軍国酒場の類ではない。彼女の眼差しは真剣だった。